第14話 城好きニュートン・ニューヨーク卿。

 やっとお見えだなと皆が声の方を向く。

 声の主ニュートン卿は先程に続いて大きな声の独り言を飛ばしながら近ずいてくるかと思いきやパタリと、いきなり座り込む。


「なんとな!ちるな姫!ちるな姫、此方へ!」と手招き叫び出す。


 ちるなは、微笑みながら

「はい!何でしょうか、教授」と小走りにその場へと駆け寄る。


 ニュートン卿がしゃがみこんでいるのは、土、土砂を盛り上げた土手の様に造形されたひと区画。

 この土手は升状に一辺2メータが四角い辺を形どり、中は四角に切り抜かれた空洞でありこの升が見渡す限りに紫の狼煙方向を中心として大外回りを取り囲む様に敷き詰められて配置されている。


「ちるな姫、これ程見事な縄張りは初めて見ましたぞ。

 姫よくご覧ください。

 升の底には岩石を加工した逆さ槍がビッシリと敷き詰められている。

 逆さ槍も見事、金属や竹を使わない半永久的に機能し続ける悪辣なる構え。」

 私目はこの山谷に分入り具につぶさにこの縄張りの巧みさを構築した御仁があの至高の縦穴に住うのかと思いいるにもう関節全てが打ち震え立つ感動に包まれております。

 唐突に「この足下は北条が得意とする堀障子の構えです。ご覧あれ! 」

「ほぼ似ているので御座る。難攻不落と謳われた太田金山城の総構えを目にしているようです」


 この屋外授業の様な状況に小太郎が割って入る。

「感心するのはその作った人に会ってからでいいんじゃないかな〜」


 ニュートン卿の解説を一通り聞き終えたちるなも頷き、紫の狼煙を上げた場所の状況の報告を行うように

 ニュートン卿に促す。


 この岩山に囲まれて急勾配の傾斜をつけながらそそり立つ小山の報告がやっと始まる。


 ・この小山の規模は小山中心に半径4、5キロ(小山を取り囲む岩山地帯も含)

 ・この岩山自体が山の地形を利用した山城となっている。

 ・山城の構造は難攻不落と謳われた北条一族の太田金山城の縄張りに酷似。

 ・ただ山城を守る城兵は一人も見かけていない。

 ・小山の中心である登頂部に近づく程神威が強く、ニュートン卿でさえも狼煙を上げて即刻撤退して来た。

 ・登頂部の真ん中には大きな岩で蓋をされた入り口らしきものがある。


 この報告後、ニュートン卿は気絶して昏睡状態となってしまった。

 ニュートン卿は気力を振り絞って此処まで辿り着いたようだ。

 気力の減衰よりも発見の喜びの方が少し勝って今まで元気だったようだ。


 報告を聞いていたちるなの表情は、ニュートン卿を気遣いながらも俯いた顔は嬉々とした表情。

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