第9話 霧の中で。

 恐怖の始まり。


 〜○〜


 影は居合いの玄蕃ゲンバ、甲州乱破の飛助トビスケ、尼僧の明鏡メイキョウ剛力無双アラハバキ神威カムイ、ろくろっ首おオキョウを入力…等異能の力を持つあやしい奴ら。

 飛助が目線を陣幕の一点に投げる。

 陣幕から女人が浮き出る。

 霧隠才蔵だ。


 あやしい奴らじゃ才蔵の姿を確認すると霧の中に溶け込んで消える。

 才蔵も霧に隠れる。


 霧は陣幕の外に流れ出て静かに深き森を覆っていく。


 〈ガシャガシャ〉と甲冑の音をさせながら追討部隊が森を進む。

 忍びから伝えられた方向を四方から取り囲む様に進んでくる。

 伝令に走った忍びは先頭で誘導する。

 足元に這う様に広がる霧を見て歩調を速くする。


 忍びはその行く手に篝火が灯っているを見て身構える。

 まだ陣幕までは来ていないのに篝火?


 篝火が近く成るとそこに芸妓が一人シャなりと立っている。

 有り得ない風景。


 忍びは中腰に背を低くして背中の忍刀をいつでも抜ける様にして近ずく。

 霧の霞が薄れる位に近ずくと艶やかな芸妓がニコリと笑みを浮かべている。

 くノ一に慣れている忍び、騙されるわけないと油断せずに近ずく。

 それが命取りとなる。

 命を取られる前にとんでもない恐怖を味わう事になる。

 首が首が〈スルスル〉と伸びる伸びる。

 唖然とする中木々の頂点の高さから艶やかな小顔がニコリと睨む。

 体はそのままシャなりと立ったまま…。

 〈ニュルリ〉と首が抜ける。

 そして艶やかな顔が鬼畜に豹変して木の頂点の高さから急降下してくる。

 忍びは棒立ちのままグルグル巻きで骨を粉々にされ最後は首筋を噛み裂かれて崩れ落ちる。

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