第85話 少しは分かってくれたかな。

 怒らない!怒らない!白鴉ハクアも意識しているからね!

 〈ぷんぷん〉しているハクアをなだめながら先を続ける。

 多分同じ想いを共有出来る仲間が惹かれ合って集まっている様に思う。

 理不尽に再見舞われない皆んなで安堵できる真の世界を築きましょう。


「儂等が願いは一族と平穏なる日々を過ごす事じゃて。齢は長く重ねども安寧が一番」

「一つお聞きしてもよろしいかな。尊きお方が自身を七つの勾玉にして封印し悠久の大河に身を沈めて眠りに入った理由は何だったのだろうの?」


 ぬらりひょん爺が質問する。


 妖怪族の中には古の伝承を受け継いで尊きお方が築いてい世界の素晴らしさと突然の消失が起きた事を知っているものも居る。

 その理由次第では安寧は来ない。

 田心姫神が憔悴仕切って妖怪の里に辿り着いた事も尊きお方の消失が理由だろう。

 何故その様な事態となったのか。


「真髄を突くね」

「僕の記憶はまだまだ完璧では無いけど、今の自分で推測できる話はできるよ、それでもいいかい?」


 宴会場のみんなが無言で同意する。


「勇也の暴走で黄泉平坂の門が開いた折、禍々しい古きものが進行して来た。圧倒的な邪悪に立ち打つ事も難しかったと思う。僕の覚醒は古きものの活性化が起因しているようでケルノンクスが命を賭けて見せてくれた邪悪なるものらの無慈悲な進行状況でそれに対する備えを行わないと人の世も妖怪の世も消え去ってしまう事を僕に眠る古の僕が警鐘を鳴らし知らせてくれた。完全体へと戻らないと対抗できないと」


「古きものとは因縁があるんだよ、僕が悠久の中に眠りについたのは多分古きものを封じる為に力を使い切った結果でないかと思うんだ」


 田心姫神の声が唐突に響く。

「仲間と自身の七つの力を退避させて貴方はクトゥルを連れて奈落に落ちた」

「古きものクトゥルを封じる手立てを自分一人で背負って消えられた。それで残された者らの生きる気力も消滅してしまった。クトゥルを封じるならみんなで封じると約束して下さい。それが私の願いです」


 田心姫神の声が終わると静寂が訪れる。


「分かっているよ!一人はね、寂しすぎる、皆んなでやれる様に準備をしよう!」

「でもその前に皆んなが安堵できる世界をこの異世界と現代に築こう」

「古きものの侵攻は色んな場所で起き始めている一つ一つ潰そう」

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