第70話 みなみちゃん。
ハクアが苺みるくキャンディーの包み紙から現れた女の子に向かって
「初めましてみなみ様」と厳かに会釈をする。
「みなみ様の存在は大きく、非業の最後より此の方までゆうや様の心がみなみ様をずっと作り出して心の癒しとされておられました。私どもはそのお姿や言動が不憫で心の臓が痛み続けておりました」
「いつかは破綻する現状を先延ばしにしていつのまにかゆうや様の心の傷を大きくしてしまいました」
「田心姫神が英断されてゆうや様に告げた真実はゆうや様にしっかりとした歩みを促し己で生きる力を産ませる試練だと思います、が、余りにもみなみ様への想いが強過ぎて反動が大きく闇に染まりそうなんです」
「救いの手を掴んでくれるのはみなみ様あなた様しか居ません」
ポニーテールの女の子は〈にこり〉と微笑んで黒い球形の塊に向かって歩いて行く。
ポニーテールを左右に揺らすその後ろ姿はあの勇也が過ごした珠玉の日々のあの少女。
黒い球形の塊を意識するでも無く少女は進む。
〈ブワーン〉と塊は霧散する。
「う〜もぉ、〝ゆうや〟!あなたまたジクジクしてるようね!」
「あたしはいつも一緒だって言ってるでしょう、何を人形作くり出して遊んでいるのよ、全く男子はお子様よね、呆れるわ」
みなみちゃんがまくし立てるほど、ゆうやが纏う黒い靄が薄らいでいく。
そしてみなみちゃんに振り向いた!
「だってだって……」
「あたしが大事に思うのは黒いゆうやじゃなくて優しく間抜けで頼りになるゆうやよ!」
「あたしが浄化してあげるだからゆうやを大事にしてくれる人を大切にするのよ」
「じっとしてなさい!」
みなみちゃんの足元から白い光の粒が昇り始める。
光はゆうやの頭上まで舞って行きゆうやに降り注ぐ。
「あたしはずっとゆうやと一緒だからもう駄々は捏こねないのよ」
「約束するわね、もうお子様はしないと!」
「いいわね、ゆうや!」
「あたしはずーっとずーっとゆうやと一緒」
光の粒子がゆうやに降り注ぐ程にみなみちゃんは消えて行く。
もうみなみちゃんの姿は無い。
ただそこの空気は笑顔。
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