第69話 幽体エクトプラズム。

 苺みるくキャンディーの包み紙を手の平に置いてジャックは息を吹き掛ける。

 白い靄が〈モワモワ〉と昇り始める。靄、煙と比すると質量感があるように感じる。

 これは幽体、エクトプラズムだ。幽体は靄を集積させて人型を形取る。

 人型は背丈140センチ程の小学生位の大きさとなると細部の造形に入る。

 肩下まで伸ばしたポニーテールが造形され色付き始める。

 そこに現れたのはみなみちゃんだった。

 幽体は細部まで発色しあの時見たままの姿となった。


 切り裂きジャックは思考する。

 ここまで実体化するとは僕も初めて見た。

 この二人の絆は半端じゃ無いね。

 よくもここまで絆を紡いだものだよ。

 たった齢14、5年の生存期間でここまでの到達は感心するしかないだろう。

 普通ね幽体が実体化するときは二つの大きな要素がある。

 一つは霊魂の活動エネルギーとなる魔法元素とも呼ばれるエーテル。

 多ければ多いほどその活動は大きく繊細に多種多様な変幻も可能とする。

 もう一つが集めようとしても集まらない特異なモノとなる憑代。

 それは物質の時もあるし心情的な心の中に存在したり、形、無形様々に在りようが変化し存在する。

 今回はこの二つのファクターが共に常識を超越した事になるね。さてさて次なる展開が楽しくて仕方ない!

 この稀なる事象にお目に掛かれるとは白鴉の所に向かわせたギヒノム卿に感謝せねばなるまい。


「みなみ君、聞こえるかな、君の大切なお友達のゆうや君を救って欲しいんだ」

「僕は君が今居た幽霊界を司る一族なんだけどね、ちょっとこちらで手伝って欲しくて呼び出したんだよ」

「君とゆうや君の絆の深さにはびっくりさせられたよ」

「肌身に感じているだろうけどゆうや君の心が闇に染まりそうなんだ」

「ゆうや君を慕う白鴉の娘が命を張って君を呼び出す依代を持ってきてくれた」


「さて君はどうする?」

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