第67話 あと少し。

 降り立った場所は少し小高いようで飛び降りなくともさんを跨ぐように降りれた。

 エインセルはもう人形の程でハクアに抱かれて〈ピクリ〉とも動かない。

 爬虫類か虫の死んだふり見たいだ。

 小高い丘から黒い球形の塊が見える。

 多分あれだ。ゆうき様の気を感じる。

 〈バサーッ〉とハクアは白銀の翼を広げる。

 ゆっくりと羽ばたきながら上昇する。


 上から見た丘は丸い円状の土塁と台形の土塁を組み合わせた形。

 そう古墳だった。

 日本史に出て来る前方後円墳だ。

 丸い円状の土塁と台形型の土塁の接合部に大きな頭蓋骨が嵌っている。

 ここは黒き沼を土塁で埋め尽くして封鎖した場所。

 前方後円墳は荒魂を鎮守する術式結界であると言う。

 結界の呪印が黄泉比良坂からの邪気を封じ込め幽鬼の侵攻も防いでいる。


 ハクアは黒い球形の上空に到着した。

 塊は透けており中に勇也が座しているのがボンヤリと見える。

 ハクアは黒い球形の塊の上から内部に降り立とうと試みる。

 〈ブーン〉と弾き飛ばされ地面に激突しそうになる。

 体勢をギリギリで立て直す。

 今度は歩いて近ずこうとする〈ボワーン〉と強烈なプレッシャーが襲って来る。

 それでも前に進む。

 体が熱い〈キリキリ〉と気体が細かな刃のように襲って来る。

 小脇に抱えているエインセルのふりふりのドレスも綻び始める。

 〈ギロン〉無表情だったセルロイドの顔が目を剥いて怒っている。

 フランス人形の片手が〈クルクル〉回る。

 青い渦が生まれる。

 青い渦は周りの空気を吸い込み始める。

 空気と一緒に高圧な気も何故か吸い取られて行く。


 いつの間にかハクアの後ろには

 雪姫を筆頭に妖術方の面々が居並び術を展開している。

 金色姫、ケサランパサラン、五位の光、鈴彦姫が続き気を青い渦に導く。


 勇也に後少しで到達できる。

 勇也に会える。

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