第65話 見つけた宝物。
静止した朝焼けの中で茫然と立ち尽くすハクア。
あまりの衝撃に思考が止まってしまった。
「勇也君の最後の朝だったね、最後の彼の勇気見事だったね」
「彼を救うのは白鴉はくあだよ」
その言葉がズンと心に落ちる。
ハクアの思考が動き出す。
私はゆうや様を救う為に来た、状況に流される様な柔な心ではいけない。
私は命を賭してでも救うの!ゆうや様を。
「ハクア。もう一度時間を巻き戻すかい」
「お願いします」
〜〜〜〜〜
〈キンコンカンコーン〉
「は〜い、終業式の日程はこれで終わりです。
冬休み中、怪我無く、
お餅食べすぎてお腹壊さないように無事に元気にまた来年六年二組
のクラスで会いましょう!約束ですよ(^_^)/」
※ここでいい。
もう見つけてる!
ハクアは白銀の翼を広げ教室の風景を後にして空の彼方へと飛翔する。
向かうは勇也の家。
隣に住むミナミちゃんが押し掛けてくる勇也の家。
その縁側に面した部屋がゆうや様の部屋だ。
〈フワリ〉と庭に舞い降りる。
サッシを開けて部屋に入る。
黄色い勉強机、本棚にはジャポニカ百科事典、地球儀。
ゆうや様の姿が残像の様に眼に浮かぶ。
缶の入れ物を探す。
机の一番下の引き出しにそれはあった。
缶の蓋を開けると苺みるくキャンディーの包み紙が綺麗にシワを伸ばして保管されていた。
メモが入っている。
僕の宝物783枚、ミナミちゃんが僕だけに心を向けてくれたのが分かった回数
苺みるくキャンディーの包み紙にポタポタ涙が落ちる。
すぐにポイされる包み紙を宝物として扱う。
その包み紙の先にミナミちゃんの心音をダブらせて大事に保管する純粋さ。
包み紙一枚一枚から二人の笑顔、笑い声が聴こえて来る。
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