第60話 騒がしい異空間。

 

「さあ、行くわよ」

 エインセルはハクアの手を引き宙を〈スルスル〉と移動する。


 後ろの方から無音の異空間に響き渡る罵声がする。

 その出鼻をあるものが塞ぐ。

 それは綱引きの様な太い綱に複数でしがみ付いて〈ふわふわ〉異空間の意のままに所在無く漂っている妖怪たちだった。

 先頭で綱を引くのは天邪鬼。

 綱に掴まり〈ふわふわ〉連なっているのは大天狗、トイレの花子さん、妖魔スプリガン、エミリア、そして雪姫。

 〈ゴチャゴチャ〉と煩い場違いな面々が近づいて来る。


 エインセルが立ち止まる。

「あなた達!ここを何処だと思ってるの!二度と出られないかも知れない魔界の迷宮異空間なのよ」

「普通に〈ゴチャゴチャ〉してるんじゃないわよ!」

「雰囲気台無しじゃないの」


 天邪鬼あまのじゃくが真摯に謝る。

「どうしてもハクア殿救出に向かいたいと懇願されつい来ちゃいました。こんなにゾロゾロと付いて来るとは思いもよらなんだ、すまぬ」


 〈うおおおおお〜〉大天狗の嗚咽が始まった。

「姫、ご無事で何よりで御座います」

 〈うおおおお〜〉


「このデカ鼻の鼻水垂らし静かにしなさいよ」

「鼻水が飛んでくるじゃない!」花子さんがプリプリ怒る。


「ハクアは無事と確信していたが、ハハハハハ」と笑いながら綱を話して異空間に流されそうになり大慌てで綱にしがみ付く、やはり大間抜けのスプリガン。


 キョロキョロ興味津々に異空間を見渡して挙動不審のエミリア。


 静かに安堵の微笑みを浮かべる雪姫。


 煩いながらもハクアを思って命懸けで救出に飛び込んだ面々。


「有難う御座います」とハクアは丁寧に頭を下げる。


「さ、ご対面時間終了〜帰るわよ!」とエインセルが話を戻し手を引こうとすると決死の表情でハクアが話し始める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る