第59話 異空間。

 〈ユラユラ チカチカ〉と赤紫の線が伸び縮み歪み明滅する。

 空間が視覚できるこの状況。

 明らかに異空間。

 その空間に抱かれて宙にハクアは浮かんでいた。

 ハクアの体は白金の光を放っている。


 ミケちゃんが爪で空間を裂き私を放り投げてくれた。

 あのまま突き進んで行けば黒き瘴気の渦に飲み込まれていた。

 危なかった。

 特に光属性が強いハクアは致命傷となっていたかもしれない。


 何とか姿勢を整えようと思うが上なのか下なのか横なのか分からない。

 頭が鬱血すればそれは逆さまなのだろうと重力感を元に判断できるがその感覚が全く無い。

 そこに留まっているのか動いているのかも分からない。


 段々と知覚器官も朧げとなりこの空間に溶け込んでしまいそう。

 支えは精神力しか無い気を丈夫に溶け込む意識を払い除ける。

 でもいつか限界が来るだろう。

 それまでに誰か助けが来るのだろうか。


 眼を開けているのか分からない状態の目の前に横からフランス人形が〈ヌー〉と顔を出す。

 あまりの唐突さに仰天するがこの空間で始めて目にする物体に喜びが湧き上がる。


 そしてそれは話しかけてくる。

「ね、白鴉天狗のハクアちゃんかな?」

「ここね次元の狭間だから色々漂ってるのよね、あなたで30人目よ」

「質問ターイム、あなたが一番大事に思う人は誰ですか?」


「ゆうや様!」


「ピンポーン!さ、帰ろう」


「あなたはどなたでしょうか?」


 〈アハハハ〉

「名乗ってなかったわね」

「私はエインセル、ちるちゃんから頼まれてあなたを助けに来たの」


 ニコリと60センチ程のフランス人形が腰を屈めて会釈する。

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