第58話 天狗八仙再び。

 〈ヒッヒヒュ〜ヒヒュ〜〉外道音呪がわらう。

 変な嗤い方。

 それもその筈、身体半分しか無い。


 ゆうやのエーテルで超進化した幽鬼5体との闘いは熾烈を極めた。


 超越の力に酔った外道は1対1の勝負で挑んできた。


 〜〜

 外道音呪を真っ二つに寸断したのは彦山ゴーレム。

 彦山ゴーレムは風の渦を左右に幾つも創り風の坩堝竜の巣を創る。

 ぶつかり合う風の渦は共鳴しあって高周波を発生し聴力を奪い去る。

 音での攻撃をする外道音呪には何も出来ない。

 眼前の龍の巣から刃が一閃するのも気がつかぬ程の一方的闘いだった。

 外道音呪は彦山ゴーレムの単なる刃の一閃で崩れ落ちる。


 〜〜

 外道土腐をボロボロの土塊に戻したのは比良山ゴーレム。


「木の葉を舞わせて目眩し笑わせる」

 外道土腐はどんどん木の葉の乱舞する中を突き進んでくる。


 木の葉はペタペタと外道土腐に貼り付く。

 蔦科の植物は根元だけでなく蔦や葉先にさえ根がが有りそこから株分けして繁殖する。

 貼り付いた葉は根を外道土腐の極上のエーテルを吸いまくった身体に突き刺しグングン育った。

 根はご馳走を求め身体中に根を浸食させる。

 結果、外道土腐は根にミリ単位で裁断されボロボロの土塊となる。


 〜〜

 外道呪蛆を炭と焼き尽くしたのは飯綱ゴーレム。


 〈ニヤリ〉「炎でなは無い。攻撃面に大網のように大きな隙間が存在する電撃など我が蟲の大群を防げるものでは無いわ」


 両肩の管筒を両手で抱えて立つ飯綱ゴーレムは超高電圧でスパークしている管筒を真上に向ける。

 そして管狐を打ち上げる。

 〈ヒューーン〉と管狐が上昇する〈パーン〉と上空で毛皮全てを脱ぎ捨てる。

 飛び散った幾万もの微細な毛は一本一本に超高電圧の電気を纏っている。

 それが外道呪蛆が放った蟲の大群の真上から降り注ぐ。

 逃げ場などない。

 〈パチパチ〉〈パチパチ〉と焦げ臭いが生じ煙が靄のように一面を覆う。

 靄が薄れると飛んでいる蟲は存在せず、外道呪蛆も身体丸ごと灼け爛れ〈プスプス〉と黒い煙を口から吐く。

 超高電圧の毛を吸い込んだのだ。

 〈キュイーン〉〈ドスッドスッ〉上空から高速の管狐がトドメに外道呪蛆の心臓を貫く。

「キュルルル、ハックション!」管狐が風邪を引く。


 〜〜

 外道剛切の刃を叩き折ったのは鞍馬ゴーレムの二刀。

 鞍馬山で源九郎義経に剣技を授けた剣聖に剣で挑もうとは愚か。

 剣技を授かった義経はその剣技を義経ぎけい流として昇華させた。

 そも剣を交えるとはその剣流の流れを巧みに泳ぐ事。

 剣流の先にある起点に必殺の一撃を見舞う事で勝負はつく。


 単に剛を得たのみの外道剛切の太刀筋は隙だらけの盆踊り。

 合わせ踊って起点を突き放題。


 剛の剣でも錬精錬時の溶解した金属が冷え固まる際の微小なひびがある。

 ひびを突かれ続けるとポキリと折れる。


 外道剛切は剛剣を折られた時心も折れた。


 茫然自失の外道剛切は返す刀で据え物の様に首が飛ばされる。


 〜〜

 外道千里の千里眼を気狂い目潰したのは大天狗ゴーレム。

 大将格同士の闘いは一瞬で終わる。


 外道千里は余裕。

 未来が見える者が負ける訳がない。


 大天狗ゴーレムが背中の巨大な紅蓮の扇を抜き放ち身構えるのを余裕の眼差しで見ている。

 大天狗ゴーレムは左手の手甲脚絆てっこうきゃはんの紐を解き手相を露わにする。

 その手相は世にも珍しい運命自在の未来操作の能力がある事を物語る手相。


 右手で紅蓮の扇を仰ぎつつ、「無限紅蓮三千世界」と呪印を唱える。

 微風程度で紅蓮の息吹が外道千里の肌に届き触れる。


 〈ギャーッ〉外道千里はのたうち回る。

「先が先が先が無い、何処までも紅蓮の炎に焼かれ続ける」

 地獄の最下層の無間地獄に落とされたと等しい未来を見た外道千里。


「千里眼を使ったか、さもあらん見なければ良いものを先が見えるのも難儀じゃの〜」


 外道千里は自らの手で眼を潰す。

 だが視覚ではない地獄絵図は脳裏を焼き尽くす。

 気が狂う。

 大将を務める気丈夫で理路整然のものも知的であるが故に先を悲観する見識も高かい。

 自我崩壊。


 天狗八仙の本気は破格の強さ。

 ただその力量を集中発揮させたのはハクア姫への一途な想い。

 そのエールは届くか?


 天狗八仙のゴーレムは膝をつき動かなくなる。

 全知力身体力霊力全てを動員して崩れ落ちる。


 海水が天狗ゴーレムに打ち寄せる。

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