第54話 山動く。

 黄泉醜女融合種の圧が更に薄れる。

 黒き沼の入口の封鎖の今が好機。

 力押し方の山がグーンと動き始める。

「押し出せ!押し出せ!」一目入道の声が響く。


 黒き沼を取り囲む範囲がぐぐっと縮じまる。


「いよいよ儂の力が使えるの〜」

 とうせん坊が通線防とうせんぼうを発現する。

 黒い沼の周りに目に見えない境界線が引かれ先に進めなくなる。


「次は俺じゃ」

 逆柱が目に見えない通線防に沿って20メータはある支柱を50センチ間隔に正確に出現させる。


 妖怪の連携。

 これは持って生まれし能力を極限まで研ぎ澄まし必要と求められるシーンで最大の尽力を行う。

 能力の差は産まれながらに歴然とある。

 その事を認め合い尊重する。

 妖怪ながらの価値観。

 それが遺憾無く発揮されている。

 バラバラの個人プレーかと思いきや能力の差をしっかりと見極めた妖怪の世界こそ団結力。

 そして身の丈を弁わきまえた優しさの世界。

 強気は弱気を守り。

 弱気は得意分野まで強気の力が遺憾なく発揮される様に尽力する。

 そして適材での能力をプライドを持って実行する。


 それが今行われている。


「それではの〜」と一番の巨体ダイダラボッチが黒い山にしか見えない体を動かし始める。

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