第52話  真っ赤な曼珠沙華畑。

 小豆公望は残りの妖怪で増援派兵の構成を組み始める。


 山を止めているインスマウス人と黄泉醜女の融合種の動きが少しずつ変わってきている。

 黒き沼の中には稲光が見えていた。

 まだ中に雷神が居る筈。

 伝承的には8柱の雷神が居る。

 幽鬼の数百倍は強力になっている黄泉醜女融合種のこの勢の中に雷神の増援は戦略的にも是である。

 なのに雷神が出て来る気配がない。

 それどころか、黄泉醜女融合種の圧が弱まってきている感がある。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 黒き沼の中に雷神は居た。

 雷神の主勢となる大雷神、火雷神、黒雷神の3柱が話している。


「鳴雷神、伏雷神が屠られたか、妖のものも侮り難しよの〜」

「それで地獄側より追いすがりしバケモノとは如何なるものものや」

「どの様なバケモノであろうと若雷神、土雷神の2柱が向かっておるので問題なかろう」

「雷神2柱を相手にしてはバケモノと言えども黒焦げとなるは必定」


「そも黄泉醜女が変異しているとも聞くがこれは如何なる事や」

「黄泉比良坂の亡者の壁より古きものが溢れ出て黄泉醜女に取り憑いた様じゃて」

「配下の幽鬼、黄泉醜女は取り憑かれて指揮下にはもう居ない」

「邪神は毎度エゲツないの〜」


「今般の黄泉比良坂の開門、好機と捉えたがちと考えねばならぬな」

「禍々しき古きものに便乗されては困るからの」


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 その頃、地獄側に降りて行った若雷神、土雷神は余りの情景に固まって立ち尽くしていた。


 猫耳とミケ柄の尻尾の黒いタートルネックに黒いレザーのベスト、黒いハイソックスそしてレザーの超ミニタイトスカート、目元がキリッとしたボイッシュな感じの美少女が立っている。


 多分こいつがバケモノだろう。


 このバケモノ美少女を取り囲む数百の黄泉醜女が、美少女の動作と同じ動きをしている。

 右手を上げれば右手、右右左足とステップを踏むと数百が同じ動きをする。

 まるで盆踊り大会の会場が地獄の一丁目黄泉比良坂で展開している。


 バケモノ少女が大きく脚を振り上げてジャンプする。

 超ミニのタイトスカートからお尻丸出しで真っ赤なパンティが…。


 〈おおお〜〉と若雷神、土雷神から声が漏れる。


 バケモノ少女の動きはどんどん早く激しくなり右手を斜め上に突き上げて止まる。

 数百の黄泉醜女も同じ動きで止まる。

 決めのポーズだろうか。

 静止したまま静寂が流れる。


 バケモノ少女が大きく息を吸い込み「怨」と呟く。


 数百の黄泉醜女は大きく斜め上に突き出した右手首の指先を一直線に伸ばして自分に向けて渾身の力で自分の首に突き入れる。


 〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉〈シュパー〉

 …。


 首が千切れる程の勢いで突き入れた右手首が深々と首に突き刺さる。

 鮮血が飛び散り、遠目から見ると数百の綺麗な曼珠沙華。

 それはそれは綺麗なお真っ赤な花畑に見える。

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