第51話 力押し方。

 将門公の眼前にいきなり大小様々な山が幾つも現れる。

 力押し方は将門公の眼前に転移した。


 その時点で幽鬼に対する城壁となる。


 がしゃどくろは忙しなく〈ガシャガシャ〉動き油すましの油で泥濘ぬかるむ土が飛び散る。

 将門公の所まで泥油が飛んで来る。


「べちょべちょじゃないか〜!」


〈ガシャガシャ〉


「援軍かたじけないが〈ガシャガシャガシャガシャ〉と!もそっと静かにせ〜い!」


 一目入道が振り返りゴメンちゃいと〈ニカッ〉と愛嬌振り撒く。


 油泥塗れの将門公がまたまた激怒が増す。


 一目入道は上半しむき出しの胸がモワモワでのゴメンちゃいはバカにされてる様に感じる…。


「えーい、もう良い先に進軍されよ!」


〈ガシャガシャ〉〈ガシャガシャ〉

 がしゃどくろが、また大きな油泥を巻き上げて将門公の頭に〈ドシャッ〉。


 黒き沼を囲う様に山が動き出す。


 幽鬼の群れの中に一回りランクが上の黄泉醜女が混じり始め当たりが強くなって来ている。


 一目入道の前進が止まった。

 足止めしているのは顔が魚類の黄泉醜女だ。

 黄泉醜女よりも更に力が増している。


 一目入道の足にしがみ付いて「ダーゴン、ダーゴン」と呪文の様に唱えている。

 だいだらぼっちも捕まった。

「ダーゴン、ダーゴン」「ダーゴン、ダーゴン」「ダーゴン、ダーゴン」

 その声はどんどん増える。


 山の進軍が止まりつつある。

 押し返され始めている。


 延々と黒き沼から這い出して来るインスマウス人と黄泉醜女の融合種。

 これはマズイ。


 百目の視覚ライブ中継画面を見ていた小豆公望も次なる派兵の計画の見直しを考え始めた。

 計画通りであれば、力押し方が黒き沼を塞いだら、海のものの海水で黄泉比良坂内を押し流そうという算段だった。力押し方が苦戦すると最後の詰めまで辿り着けない。

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