第48話 大和。

 日本人なら分かる。

 この想い。


〜○〜

 

「私はねジャック君、君の幽界の力をオルゴールに籠めてみたけれどこのこの人らの姿だけは堪らないよ」

「生を自身の努力、そして他を思いやる心、己を犠牲にする最上の心、あの頃の日本人はそれを誰もが持っていた」

「戦争という極限の世界で正に心の芯が不幸にも桜の如くに満開に咲き散ったね」

 ギヒノム卿は頬の涙を拭うことなく、次のオルゴールを取り出す。


 そのオルゴールの蓋には《大和》と日本語が刻印されている。

「この海戦はこれで終わりにしよう」

「もう涙で見てられないや」



 北緯30度43分 東経128度04分 / 北緯30.717度 東経128.067度、長崎県の男女群島女島南方176km、鹿児島県の宇治群島宇治向島西方144km、水深345mの地点に沈んでいる。


 〈ポコポコ〉

 〈ポコポコ民子、一太郎、お父さんは守るから…。〉

 〈ポコポコ沖縄の皆さん、僕ら見捨ててはいません、待っていて下さい…。〉

 〈ポコポコ日本の国土は踏ません…。〉

 〈ポコポコ大和は私達の家も同然です、ここで降りたりはしませんよ…。〉

 〈ポコポコ…。〉


「ジャック君ここの気泡の泡立つ海域なのかい?」


「ギヒノム卿、そう、ここに至高の日本の心が静かに眠っています」


「ここで海の英霊巡りは終着なんだね」



 九九式艦上爆撃機の腹に抱く九三式魚雷酸素魚雷が次々に投下される。

 真っ白な軌跡を海面に描いて疾る。


 ハイドラの触手に命中!

 触手が吹き飛ぶ。


 南の空に眩い白銀の閃光。

 艦首に菊の御門を輝かせている。

 戦艦として史上最大の排水量に史上最大の46cm主砲3基9門全てがハイドラに照準している。

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