第46話 連合艦隊、海行かば。
巨大な怪物への高火力の直接打撃は凄まじくハイドラはのたうち回る。
海坊主の様な体に大きな風穴が幾つも空く。
だが古きものは万古の知性も有する。
ただ攻撃を受けるのみでは無い。
それは海中から艦隊に忍び寄る。
海中に潜む8本の触手が艦隊の真下に潜り込む。
よく大航海時代の絵巻物に蛸に似た怪物がガリオン船を触手で羽交い締めてへし折る絵があるが流石に鋼鉄の艦船は無理だろう。
6本の触手が山城に絡みつく。
左右の腕に当たる残りの2本の触手が山城の艦底真下でドス黒く輝きを増す。
〈キューーーン〉漆黒の閃光が2本放たれる。
山城の分厚い艦底が真っ赤になり海水が〈ブクブク〉と煮立つ。
やがて艦底の鋼鉄が溶解して山城の艦内に漆黒の閃光が充満する。
艦内彼方此方で火災が発生し、山城全体が紅蓮の炎に包まれる。
山城の指揮艦橋の艦長室から伝言投光器が明滅している。
「ワレ ココマデ カクカン ノ ブウン ヲ イノル」
紅蓮の炎が艦長室の窓を染め上げる寸前、直立不動で敬礼している艦長の姿が見えた。
山城轟沈。
長門・陸奥・扶桑は怯まず突き進む。
ギヒノム卿が静かに「暁よ!再び空へ」
黄泉の海原なのか、古きものが棲まう異次元の海なのか、そのドス黒き禍々しい海原に紅蓮の暁が燃え立つ。
燃え立つ暁を背に甲板に日の丸を描いたあの航空母艦の姿が浮かび上がる。
赤城と加賀だ。
紅蓮の赤の中からゼロ!
零式艦上戦闘機の機影が浮かび上がる。
その後ろから九九式艦上爆撃機が続く。
〈ブーン〜〉ゼロ戦のエンジン音が山城轟沈場所上空を旋回する。
何かを見つけた合図翼を傾ける。
九九式艦上爆撃機が急降下して海面スレスレをゼロ戦の合図の場所まで急行する。
その腹には九三式魚雷酸素魚雷を抱いている。
獲物はハイドラの水中に潜ませている触手だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます