第44話 オルゴールの兵士たち。

 そこに取り出されたオルゴールは西欧の城を形取った蓋をしている。

「先ずはこれからだね」

「十字軍の意志を受け継ぎし正義の騎士団よ出でよ!」


 蓋を開けると流れ出した音色はくるみ割り人形。

 軽快な行進曲が流れ出すと、煉獄回廊の壁にゴシック調の城門が現れ門が開く。

 身長1m70㎝、80㎝クラスの西洋鎧を着た兵士が隊列を組んでどんどん出てくる。

 兵士は色んな種類が混じっている。

 軽装の兵士、例の十字の眼穴の兜を付けた重武装な兵士、背に強弓を背負った兵士と色々。

 ただその兵士の肌には木の模様が見える。

 そう人形の兵士。

 無表情の人形の軍団。


「鉄壁進軍!」

 重武装の兵士が前衛盾となりインスマウス人の中に突入。

「正義の斬撃!」

 前衛がインスマウス人を推すとその推し手の勢いで軽装の兵士が斬りかかる。

「強弓支援1」

 推しの勢いを増すために強弓の兵が軽装兵士の先に矢の雨を降らす。


 ギヒノム卿がもう一つオルゴールを取り出す。

 カラフルな色彩のエスニックな宮殿の蓋。

「オスマンの威風!」

 蓋を開けると軽快なトルコ行進曲が流れ出る。


 煉獄回廊の壁に〈ぷわん〉とトルコ風宮殿が現れ城門が開く。

 背中に巨大な蛮刀を背負った朱色のターバンの軽武装の兵士が躍り出る。

 トルコ風兵士は軽快に走り、十字軍の強弓兵の背後に近ずくと強弓兵士は左右に割れてトルコ風兵に道を作る。

 重武装兵の背後に集結したトルコ風兵士は背中の蛮刀を抜き放ち、身体を左右に揺らしながら闘争心を高揚させる。

「オスマンの乱舞!」

 〈バーン〉と重武装兵が盾壁の扉を開く。

 〈キエーィ〉と雄叫びをあげながら十字軍の軽武装兵の周りで蛮刀の乱舞を繰り広げる。

 徐々にインスマウス人の勢いが弱まって来た。


「ペルシアのアタナトイの蹂躙!」

 トルコ風宮殿が紅蓮の色彩に変色する。

 異様な空気が宮殿の中から漂出て来る。


 〈ジャリッジャリッジャリッ〉と槍と盾を持って黄色いターバンの兵士が繰り出して来る。

 その数1万。

 ペルシアの不死隊だ。

 前衛の兵が倒れても何事も無かった様に後ろの兵が黙々と成り代る。

 その様子はどれだけ倒しても不死の兵を相手にしている様な恐怖に押し潰される異常な圧を醸し出す。


「蹂躙せよ!」

 十字軍強弓兵、重武装兵、軽装兵、トルコ風兵が一斉に退く。


 成り代わってアタナトイ不死の隊が黙々と進軍を開始する。

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