第40話 黄泉醜女。

「猫チャン、一変したね」

「ほほう、覚醒か!」


 怪猫は変化すると言うが目の当たりにするのは初めてです。

 覚醒と同時に痺れも回復させたのか。

 これはこれは厄介。

 普段の呑気な姿に騙されてしまいました。


 おや、もう一つ厄介!

 こちらも覚醒しちゃったかもね〜。


 ピエロの生首が〈ムクッ〉と起き上がりミケちゃんの方を向く。


 ミケちゃんはピエロの首を必殺の猫爪で斬り飛ばした後、無慈悲な眼差しをピエロに向ける。


「お互い無慈悲な魔人である事ををひた隠しての道化は疲れますな」

「たまには全開で楽しみましょうか、猫さん」


 〈シャー〉ミケちゃんが威嚇で応える。


「じゃー私目も」

 ピエロの身体が生首まで真っ直ぐ歩いて来て生首を持ち上げて首に据える。

「ドレスアーップ!」と叫んでその場で一回転ターンする。

 仕立ての良さそうな三つ揃えのスーツ姿に変わっている。


「さーて、猫チャン、改めまして私目、ジャックと申します」

「通り名は切り裂きジャックで御座いまーす」


 〈シャー〉名乗りを聞くか聞かないかの刹那でミケちゃんが頭上高く跳躍して煉獄回廊の天井を蹴り、急降下して来る。

 その軌道は切り裂きジャックの脳天直撃のコースでは無い。

 ジャックの頭上を掠めて後方10メータ位の闇に突っ込む。


 〈キエエエエエ〉〈キエエエエエ〉と甲高い声が響く。


「よくも見破ったな!猫娘!」

「お前は大嫌いじゃ」

「いつもいつも邪魔しおって!」

 甲高い声の主は黄泉醜女よみしこめだった。

 古の神話で黄泉比良坂でイザナミが追ってで差し向けた黄泉醜女。

 配下の黄泉鬼女を無尽に繰り出し地獄の底から追って来るこれまた厄介。


 ミケちゃんの急降下斬撃で鬼女が三人斬り刻まれていた。

 黄泉醜女は腰の瓢箪ひょうたんを振ってドス黒い液体の雫を振り撒く。

 その雫は煉獄回廊に付着すると


 黄泉鬼女が〈にゅるにゅる〉と無限に這い出て来る。

 地獄は無間地獄の様相を持つ。

 これも厄介!

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