第39話 生首。

 〈チカチカ〉と明滅した後、ギヒノム卿の隣にピエロが立ち片足を折り曲げ社交儀礼の会釈をする。


「ギヒノム卿、どちらの首を?」とギロチン鎌をユラユラさせる。


「魔獣だね」


 クルリと身を回転させて鵺に向かって歩きだす。


「そう魔獣ね!はい、りょうか〜い」


 ピエロがギロチン鎌の柄を握り直すとドローンとした空気が漂う。


 鵺が虎の剛腕を止めた。

 首を捻りピエロの方を向きギロリと眼を光らせる。

 尻尾の蛇が〈シャー〉と威嚇の声を吐く。


 ピエロも道化を止め身構える。


 この勝敗は一瞬で決まるだろう。


 一息一息の呼吸が致命傷となる緊迫。


 鵺の虎皮の体の胸が膨張し始める。

 あり得ない程にパンパンに膨張する。


 鵺のギロリとした眼が白目になる。


 胸が裂け、肋が飛び出す!

 血飛沫が飛び散る。

 肋の門を潜り、漆黒が飛び出てくる。

 その漆黒の銀色の眼光が銀閃の軌跡を描く。


 ミケちゃんだ。

 漆黒はミケちゃん。


 ただ、あの呑気なミケちゃんではない。

 ギガント族のリノーチが魂が凍りつく程に戦標したあの恐怖を纏っている。


 ピエロのギロチン鎌が事態の急変に反応してミケちゃんを斬り裂く軌道に切り替わる。


 顔半分が宙に舞う。

 その顔は鵺。

 ギロチン鎌の斬撃の軌道の端に鵺の顔があった。


 〈ポトリ〉と頭が転がり落ちる。

 〈コロコロ〉と生首が転がる。

 白塗りの道化師の首。


 ピエロは直立不動で立ったままで首だけ落とされていた。


「ほほう」ギヒノム卿が感心する。


 〈パチパチパチ〉とピエロの体も拍手する。

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