第2話 何もかも忘れた僕は臆病に生き、電照菊な日常に溜息一つ
繰り返す日常の中に幾つもの扉とその誘いが点在します。
その存在を知りながらも本能的に避けている。
もし本能が警鐘する扉を開ける決意をしたら何処に誘いざなわれるのか。
生ある者の終着はどんな賢者も権力者も等しく訪れる逃れようもない死という大扉。
特に精神文化を太古の昔に築き上げた日本人であれば、物理世界に決別する術を会得しやすくその機会にも気付きやすいのかも知れません。
この物語のメインフレームの章となります。
実体験も交えて物語りたいと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
〜〇〜
〈ふぁー〉と息を吸い込み〈ふぅー〉と息を吐きながら涙目欠伸混じりの溜め息。
今日の仕事終わり〜と、会社の裏口の自動ドアをくぐり抜ける。
#脱出っ~う(笑)#
いつものように液晶腕時計は22時。
左斜め前には、福岡タワービルのイルミネーション。
その中を巨大なLED電飾のバレンタインハートが飾る。
「バレンタインか〜」と呟き、
バス停へと向かう。
〈パツン〉と鳴るようにイルミネーションが消灯する。
22時を過ぎた訳だ。
暗くなったタワービルの前に眩く皓々と光り輝く、不夜城で名を馳せる
某大手通信ソフト会社ビルが横たわる。
恋い焦がれ入社した会社。
憧れたね当時はね。
不夜城、その中で技術と格闘する事、それに所属する事。
誇りだった。
そう、誇りだった…な〜。
今、目にするその横たわるビルは、郷里でよく見てた早期育成の電照栽培の菊のビニールハウスに見える。
森羅万象の摂理を人が都合よく利用し自然を無視し、生命体である菊を工場のラインに並ぶ無機物扱いにした人の我が儘の成した仕組み。
宛ら自分を早期育成の菊に見立て、生命体で理性まである人でありながら工場のラインに並んだ菊のような人工の摂理を唯一と思い込ませた電照菊と成って早20年か。
そんな考えが支配的だと溜め息も一つくらい出てくるのだろうね~。
バスを待ちながら、
唐突に人のね人生ちゅうものをぼんやりと考える(笑´∀`)
〝ありゃ〟もうバスが来た。
何時ものように座ると決めているバスの後部座席の右端に座して目を閉じて、何時ものように脳細胞の記憶の扉をノックする。
今日の記憶の扉は、電照菊のビニールハウスの扉をノックしようかな。
目を瞑る。
瞼の裏の暗闇。
その真ん中寄りに視線を集める。
扉が浮き上がる!
扉を開けると、咽せるような菊の薫り。
〈キーン〉と、耳の奥が共振している。
記憶の扉の中に深く意識をダイブすると、
たまにキーンと共振音が大きくなる時がある。
怖いんだよね~キーンの時に更に深くダイブするのは…。
想定するは、よくある突然死ちゅうやつ、あれって何で突然逝ったか、、
そりゃあ、誰にも分からない。
だって生還しないから本当の所は分からないだろう。
自分脳みそが考える本能的推論でこう考える。
キーンの鳴動する先に突き進むな!
きっと、現と今生の別れとなる突然死という形が待っている。
だからキーン警告音の鳴動時は絶対に記憶に深くダイブしては、
い・け・な・い!
やはり勇気が出ない。
頭を振り、瞑想から急ぎ戻る。
見渡すバスの中は、ただただ日常。
扉の記憶を開けると、それは当然自分の過去に経験した事が仕舞われた部屋だから、部屋の中には五感にも通じる現世と同じように感じる感覚も記憶されてる。
扉の中にあった電照菊のビニールハウスの咽せるような菊息れは、
キーン警告音で引き返したけど、ず~っと現実味を帯びて鼻の奥に残ったままだった。
夢世界、帰りのバスの中で瞑想してその夢世界への扉を開く。
〈キーン〉と本能が発する警鐘音が高まり、怖くて瞑想を解く。
〜〇〜
なぜか夢世界の電照菊の噎せ返るような菊の香りは現実世界にも残る。
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