第3話 心細い朝 〈いつもの朝なの? ※心細い朝だけど、僕が守るんだ〉

 ここは何処なんだろう。


 巷でカップルを見ると、どんなにか細い男でも虚勢を張って横に居る彼女にで

 あろう女の子を守ろうとする意識が〈パンパン〉出ているよね。


 滑稽でもあり可愛くもあるな〜と感じます。


 出来る事ならその虚勢は壊さないようにしてあげたいね。


 彼女も弱い事を知りつつも素知らぬ顔で必死な面持ちを楽しんでいる。

 

 その晩の彼女の夢は虹色に輝くかもですね。

 

〜○〜


 ◇毎日当たり前に繰り返していた幼馴染み〝みなみ〟ちゃんとのドタバタ劇が

  朝日の中で唐突に赤い水面に沈んで消えた ◇


 夜明けの朝靄の中、道の端に横たわる影がモコモコと蠢く。


「ふわわ、わあ〜」

  欠伸混じりの第一声。


「おやー!」と飛び起きる。


「〝みなみ〟ちゃん、僕たちどうしたの?」

 と、〝ゆうや〟の声。


 周りを見渡す“ゆうや”。

 “ゆうや”は、大きな道の端に横たわっていた。


 そう!“みなみ”ちゃんは?と振り向くと朝霧の中にモコモコと“みなみ”ちゃんの

 姿が現れる。

 

 “みなみ”ちゃんが居る事が分かり“ゆうや”は元気になる。


「パン屋!そうパン屋だよ、〝みなみ〟ちゃん」

 〝ゆうや〟の声で〝みなみ〟も、


「パン屋!パン屋!」と騒ぎ出す。


「ちょっと待って!〝みなみ〟ちゃん」


 あの時〝みなみ〟ちゃんが大通り渡りながら立ち止まったとき、

 ダンプカーが迫ってて僕は危ないと“みなみ”ちゃんに叫びながら飛びついたんだ!

 そこまでで記憶が途切れてる。


 〈カランカラン、プワプワン、カランカラン、カカッカと、

  回転し終えた硬貨の音が

  頭の中に木霊する。。。あれは。。。〉


 道端に座って、〝終わり〟の瞬間を回想する〝ゆうや〟の後ろから声がした。


「ほほお〜、珍客だね!迷い人だね。」


「終いの瞬間を自力で思い出したようだね、強いエーテルの臭いがするね〜」


「そんな道端に居たら迷惑だよ!あたしの家に来な!」

  淡々と言葉を投げる方に振り向くと、腰の曲がった老婆が和やかな笑みを浮かべ

 立っていた。


 エーテルって何よ???


 と、その時、足先。。。。目の前の道を馬車?が、〈どーーっ〉て埃を撒き散ら

 しながら走り去る。

 

 馬車?;馬のような豚に引かれていた。。。


「え〜っ!見た見たよね、“みなみ”ちゃん」


「見た見た!足の長い豚さんね」


 朧気ながら、異世界。。。とじわじわと実感が増す。


「あーも、お若いのジレッたいの〜!そこは危ないからあたしの家に来なさい」


 周りを見回すと、舗装されていない道に沿って石積みした家が

 連なり、慣れ親しんだ木造住宅の町並みとは別物であるのが分かる。


 急に心細くなり、


「〝みなみ〟ちゃん、お婆さんの家にお邪魔しようよ」

 と話してお婆さんについて行くことにする。


 石積みの町並みをテクテク歩く。

 石積みの家の密集度合いが上がり、道も迷路のように細く入り組んできた。

 いつからか空気の匂いに卵が腐ったような硫黄臭が漂い始めている。


 〝みなみ〟ちゃんが


「お婆さんに聞きなよ、どこまで〈テクテク〉するのか」と、

〈プンプン〉気味に僕をつつく。


「おば。。」と声を出そうとしたら、


「ホレ、着いた着いた」とお婆さんが手招く。


 良かった〜“みなみ”ちゃんが草臥れて騒ぎ出す所だった。

 ふ〜助かった!


 お婆さんが手招くのは、周りの石積みの家よりは一廻り大きい

 三階建ての家だった。石塀が取り囲む門の開き戸を開けて手招く。


 すう〜っと門を潜ろうとする僕に、


「何か嫌な雰囲気だねーって」〝みなみ〟ちゃんが耳元で囁く。

 お婆さんが、横から


「さ、さ、遠慮せずに入りなさい」

 と門の開き戸の先の玄関扉に更に手招く。

 誰か中に居るのか自然に玄関扉が、〈ギギギ〜〉と内側から開く。


「さあ、中は暖かいから入りなさい!」と、優しい笑み。


 案内されるままに、門を入り、玄関扉の中に入る。


 家の中、左手は階段、右手は大きなテーブル、真ん中奥で

 暖炉の篝火が揺れている。


 暖かそうだ〜“みなみ”ちゃんを温めてあげれる、良かった。


 そう考えてると、お婆さんも中に入る。


 そして後ろ手にドアを閉める。


〜○〜

 異世界?優しいおばあさんに出会えた。

 拾う神も居るんだね。

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