ベーブンゲンの戦い 01
宇宙暦1799年7月1日―
バーデ=ヴィルテンベルク星系惑星ベーブンゲン宙域
ガリアルム・エゲレスティア同盟艦隊(仏英艦隊)15700隻と、オソロシーヤ・ドナウリア領ネイデルラント同盟艦隊(露墺艦隊)16500隻は、お互い偵察艦の索敵情報によって、相手が迫っていることを知る。
「いよいよですな。それでは、左翼はお任せする」
「了解しました。閣下もご武運を」
エリソン中将とヨハンセンは、通信で互いの健闘を祈ると陣形を展開させていく。
仏英艦隊は、左翼ヨハンセン艦隊4900隻、中央にエリソン艦隊8000隻、右翼にロイク艦隊2800隻とそれぞれ横陣で布陣し横長の横陣を組む。
その陣形内容を偵察艦で知らされたコルスノフ大将は、仏英艦隊の陣形に合わせて同じく横長の陣形を組んだ。
その陣容はコルスノフ艦隊12000隻が、左翼から中央にかけて布陣し右翼をプロヴェラ艦隊3000隻が担う。
両軍は陣形を保ったまま堂々と進軍して、その距離を縮めていく。
両艦隊の距離が30万キロにまで迫った時、近づく会戦に双方の将兵には緊張感が漂い始め、25万キロまで近づいた時にはその緊張感はピークに達っしていた。
そして、その25万キロで中央のエリソン艦隊4000隻が、急に進軍を停めてその場で待機する。
「どういうことだ!?」
「おそらく予備戦力だと思います」
コルスノフ大将の疑問に参謀のマトヴェーエフ少将は、すぐさま自分の推察を進言としておこなう。
「ならば、我が艦隊も中央の4000隻を予備戦力とする。急いで減速して停止せよ!」
コルスノフは慌てて、自分の旗艦を含めて中央部の4000隻を停止させると、23万キロの地点で予備戦力として陣取ることにした。
予備戦力は戦闘において、とても重要である。
不利になった戦列に送り込んで押し返したり、迂回させて背後を取ったり、有利な戦場に送り込んで一気に敵戦列を突き崩したりと用途は様々であり、勝敗に直結する働きをすることが多い。
そのため敵が予備戦力を作った以上、こちらも作っておかねば対応できず、コルスノフ大将が慌てて、予備戦力を作ったのも仕方がないだろう。
だが、そのおかげで中央4000隻意外のオソロシーヤ艦隊は、最高指揮官が後方で停まってしまったために、指揮系統で少し混乱してしまい、その隙を当然ヨハンセンは見逃さなかった。
オソロシーヤ艦隊が、混乱を収束させられずに21万キロまで到達した時、ヨハンセンとロイクはそれぞれ右手を上げてそれぞれ攻撃命令を下す。
「主砲、一斉射! 撃てー!」
ロイクは士気の鼓舞も兼ねて、少し大仰に攻撃命令を出した。
「撃て!」
それとは対称的に、ヨハンセンはいつもどおり冷静に端的に攻撃命令を下す。
露墺艦隊は、ガリアルム艦隊から21万キロから一方的にビームを浴びせられ、次々に爆散していく。
指揮系統の混乱が収まっていないオソロシーヤ艦隊は、ドナウリア艦隊より多くの被害を出してしまう。
そして、20万キロになった時点でようやく指揮を前線の司令官に任せることで、指揮系統の混乱を収めたオソロシーヤ艦隊も反撃を開始する。
こうして、両軍の司令官から攻撃命令が発せられ、本格的な砲撃戦が繰り広げられていく。
開戦当初こそ指揮の混乱で被害を出したオソロシーヤ艦隊ではあったが、数の有利が覆るほどの被害は出ておらず、前線での兵力は英仏艦隊が約11700隻、露墺艦隊約12400隻で英仏艦隊が不利である。
現在の仏英艦隊の布陣状況は、左翼ヨハンセン艦隊4900隻、中央のエリソン艦隊4000隻は4万キロ後方で予備戦力として控えており、右翼に前線指揮を任された副艦隊司令官アーネスト・コルトハード少将率いる約4000隻、最右翼にロイク艦隊約2800隻となっていた。
対する露墺艦隊の陣容は、左翼は指揮を任された副司令官のセルゲーエフ少将率いる約5400隻、中央では3万キロ後方でコルスノフの予備戦力4000隻、右翼は同じく指揮を任されたネヴゾロフ准将率いる約4000隻、最右翼はドナウリア艦隊約3000隻となる。
開戦から約15分後―
数で不利な仏英艦隊の前線は、少しずつ苦戦を強いられ徐々に押され始めた。
旗艦ヴァンガードの戦術モニターで戦況を見ていたエリソン中将は、味方が押されていると見るや否や予備戦力から増援の指示を出す。
「右翼のコルトハード艦隊が押されているな…。予備戦力から500隻を向かわせろ」
「はっ」
エリソンの増援指示を受けた副官のパッカー准将は、すぐさま予備戦力から500隻を向かわせる手筈を整える。
5分後、500隻の増援を受けたコルトハード艦隊は約4500隻となり、対面するネヴゾロフ准将率いる約4000隻より、数的有利を得て今度は逆に押し始めていく。
だが、それを戦術モニターで見ていたコルスノフ大将も、すぐさま増援指示を出す。
「こちらも予備戦力から、500隻をネヴゾロフ艦隊に向かわせろ!」
「はっ」
6分後、ネヴゾロフ准将率いる艦隊は約4500隻となり、対峙するコルトハード艦隊と同数となったので、再び押し返し戦況は拮抗することになる。
「左翼のヨハンセン艦隊が苦戦しているようだな。500隻を彼の艦隊の右翼に付けて援護させろ」
「はっ」
5分後、500隻がヨハンセン艦隊の右翼について援護を始めた。
500隻の援軍を得たヨハンセン艦隊は、実質約4900隻から5600隻となって、前面のセルゲーエフ艦隊約5400隻に数的有利となって反撃を始める。
7分後にセルゲーエフ艦隊に、500隻の増援がやって来て約5900隻となり、ここも戦況は元に戻ってしまう。
こうして、両艦隊は激しいビームの応酬を行い、まさしく一進一退の戦闘を続けることになる。
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