第6話 指の隙間、抜ける砂
サトネは工場に到着するやいなや、救出しようとした青木に導かれるまま、フィールドブレイズの2号機のコックピットに案内された。
現状に残された時間はそう多くない。もう1機存在した巨大ロボットのことや諸々の事情を聞き出したいサトネだったが、今は口に出かけた質問を飲み込んでコックピットシートに沈み込むより他になかった。
しかし、どうしてもこれだけは聞いておかなければなるまい。
「青木さんは、この後どないしはるんです?」
サトネが唯一絞り出した質問は、いつになくシリアスな声色だった。
「何……?」
だが、無線越しのサトネの質問の意味を、リナは解さなかった。
どうもこうも、この後は全員で包囲を突破し脱出するだけではないのか。
「社長、私は残ります」
「……どういうことだ、青木さん?」
リナの声のトーンが明らかに落ちた。
「どのみち、責任取る人間は要りますやろ」
「だから、どういう意味だって……っ!」
声を荒げるリナを遮るように、サトネが通信に割り込んだ。
「あぁ……仮に脱出が成功しても、ここで軍人さんを足止めしておく必要がある。せやないと、直ぐに追手がつく。それに、この中で誰よりもフィールドブレイズが狙われている理由を知っているのはおそらく青木さんや。悪いけどここは……」
「サトネ、お前……!」
確かにサトネの言う通りかもしれないが、青木を一人犠牲にするようでリナの気分は良くなかった。
「サトネくんの言う通りです。……社長、すんません」
「……」
青木の優しげな声で割り切った感情を、一瞬の思案と沈黙の後にリナは大きく飲み込んだ。
「……チッ。はぁ、青木専務。悪いが頼む」
「はい。サトネくんも、社長のこと……よろしゅうお願いします」
「わかりました、どうかお元気で」
リナは一瞬のためらいの後、青木との無線チャンネルのスイッチを落とした。
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