第14話 振り向かず進め


「さて、ここいらでそろそろお暇させてもらおうかな」


リナはフィールドブレイズに軽く伸びの仕草をさせて見せたが、その動作には微塵も隙きがない。多脚戦車の乗員達もそれを重々承知しているため、誰も軽口など叩けなかった。


しかし、そんな緊張状態も長く続くことはなかった。


「ん?なんだ?」


工場敷地の奥からけたたましいエンジン音が響いてきたからだ。


「車両接近!大型トレーラー、数は3台!」


フィールドブレイズ後方に擱座していた多脚戦車の車長が無線で声を荒らげた。


「!?……トランスポーターか!」


逃げられる、と咄嗟に感づいたグーテンベルクが無線に応答する間に、トレーラーの車列は工場敷地外に向けて爆走してきた。


「あらよっと!」


狼狽する国連軍部隊員たちを尻目に、リナはフィールドブレイズのスラスターを再び吹かし、大跳躍。トレーラーの荷台に豪快にも優しく着地してみせた。


「あばよ!軍人さん!」


テンプレートな逃げ口上を外部スピーカーから響かせるフィールドブレイズを乗せた大型トレーラーは瞬く間に幹線道路を爆走し姿をくらませたのであった。


「隊長!追いますか!?」


「いや……敷地外に出られた時点で俺たちの負けだよ」


蛻の殻になった工場敷地内の静寂。「しかし……」と心配する副官の言葉を手を振るジェスチャーで遮ったグーテンベルクは、工場の事務所であろう建屋を見上げ睨みつけた。


「ま、残り物の福にでも期待しようかねェ」

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