プロローグ:乾いた大地、修羅の道
第1話 どうかきっといつまでも
―――数時間前。
「うわぁ……工場、変わってへんなぁ……昔のまんまや」
静まり返った町工場。
フィールド重工の本社倉庫を訪れた青年は、懐かしげに辺りを見回していた。
この日、澪地 紗都音(ミオチ・サトネ)は幼馴染の旧友リナーシャ・ウィンフィールドに快気祝いがある、としてこの工場に招待されていた。
大病を患い、入院のためにこの生まれ故郷の町を離れて10年以上になるが、幼少期に遊び場にしていたこの工場の様子は、まるで遠い記憶の日のままだ。
そうしてサトネが思い出に浸っていると、事務所の扉から人影が顔を覗かせた。
「おっ……?おぉ、サトネか?久しぶり!」
いやに親しげな女性が話しかけてきた。
「あぁ、えっと、はい……」
子供の頃に世話になった工場職員だろうか。
まずい、覚えがない。
しかし、タンクトップに作業着ズボンという出で立ちのこの女性、どう若く見積もってもサトネとそう年齢差はなさそうである。
「リナ……社長さん居てはりますか?」
とりあえず話を変えた。
「ん……?私だよ、流石にわかんねぇか?」
そういえば彼女の姿には、なんとなく見覚えがある。
幼少期、この工場を遊び場にして一緒に叱られていた幼馴染。
たしか特徴的な桃色の長髪に、応援団風の白い鉢巻がトレードマークだった。
この女性の髪はショートカットのようだが、懐かしい色合いをしている。
よく見れば、頭につけているヘアバンドも首筋までの長さに短くなった鉢巻だ。
「え、あ、もしかして……リナ……なんか……?」
「!!」
彼女は突如として目を輝かせ、それは嬉しそうに飛びついてきた。
「そうだよ!あははーっ!いやあー、懐かしいなァー!」
「ちょ、そんな大げさな……」
抵抗虚しく、サトネはなすがままにハグされてしまった。
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