第12話 逃げ場を失う

「あーあー、ったく煤だらけじゃねぇか」


フィールドブレイズは何食わぬ顔で……もっとも表情は見て取れないが、手で汚れを払うかのような仕草をしていた。


どういうことだ、間違いなく直撃していたはずだ。


確かに爆炎をこの目で見た、不発ではない。


グーテンベルクは必死に自分を納得させる答えを見つけようとしたが、到底理解が及ばなかった。


「ん?へへぇ、驚いてるな?」


視界が晴れ、先程自分に向けてロケット弾を放ってきた張本人であるグーテンベルクの間抜けな開口顔が確認できた。開いた口がふさがらない、とは正にこのことだなとリナは思った。


「これだよこれ、こんな事もあろうかとってな!」


フィールドブレイズは下腕部に装着されている菱形の装甲をマニピュレータでコンコンと叩いてみせた。


そこが一番ひどく煤焦げていることからもロケット弾が着弾したのはまずそこと見て間違いなかった。


「シールドってやつだ。ロボットにゃお約束の装備だな」


そもそも避ける事に重点が置かれているフィールドブレイズには軽量化を優先した結果ほとんど耐弾性能は備えられていない。


その中で唯一フレキシブルに稼働する腕部と脚部にのみ、重装甲化したシールド部が設置されていた。


「チッ、即席避弾経始たぁ器用な真似しやがる……」


疑問に合点が行ったグーテンベルクは脱力してシートに深くもたれこんだ。


「どうしますか?」


「態勢を立てなおせ、隙を作ればあるいは、な」


内心、完全に威勢を削がれていた。


恐らく、この場であのロボット・フィールドブレイズを接収することは現状不可能だ。何しろ現状でこれ以上グーテンベルクたちには打つ手がない。


このまま下手に洗車とロボットのサーカスショーを続ければ、装備や人員をいたずらに損耗しかねない。なにぶん、相手のスペックが未知数な上に十分な装備もない。


いや、そもそも稼働状態の巨大人型ロボットに対処出来うる装備とは何だ?


あまりにも前例がなさすぎるではないか。


グーテンベルクは、作戦を根本から見直さなければならない事態に直面していた。


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