第11話 届けたい希望を

フィールドブレイズには設計段階から重要なファクターとして推進器の存在が組み込まれていた。


そしてそれは、大別して2種類に分類される。


1つは主機たるメインスラスター。


跳躍や走行時に併用するもので、これは腰部に左右1基ずつ搭載している。


そしてもう1つは方向転換、姿勢制御用の小型サブスラスターであり肩部と脚部にそれぞれ2基を備える。


多脚戦車の吶喊回避のために使用したのはメインスラスターであったが、あくまで短距離跳躍を目的としていため、リナは咄嗟にフットペダルを浅く踏み込んでおり、出力を半分以下に抑えて使用していた。





「ま、いくら脚が速かろうが着地時は避けれまいよ」


「げっ!?」


グーテンベルクの声を聞いたこの時、リナーシャは初めて狼狽えた。


視線の先に、軽装甲車から身を乗り出し対戦車ロケット弾を肩に担ぐ彼の姿があったからだ。


「それは反則でっ……」


指揮車たる軽装甲車をノーマークにしていたのは浅はかだった、と悔いる間もなくロケット弾は既に発射されていた。


そして、次の瞬間にはフィールドブレイズの上半身は火球に包まれていた。


爆煙で姿は確認できないが、紛れも無く直撃している。



「あーあ、やっちまった」


「参謀本部の命では無傷で確保、とのことでしたが……」


「しかたねぇだろ、現場の判断だ」


さっきと言っていることが違うじゃないか、と副官は内心でツッコミを入れた。


「よーし、対象の損壊状況を……ッ!?」



煙が、晴れた。

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