第8話 闇の向こう
フィールドブレイズを目掛け、前後から文字通り飛びかからんとする多脚戦車。
事前に示し合わせた訳でもなく、2輛のパイロットの息はピッタリと合っていた。
「甘ぇってんだよ!」
しかし、フィールドブレイズはまたしても綺麗なサイドステップを踏み、真横に移動して回避してみせた。
多脚式戦車の台頭により、AFVの機動力や走破性能が大幅に向上したとはいえ、完全二足歩行を実現しているフィールドブレイズのそれに比べれば、天と地ほどの差がある。
それは、この場にいる誰の目にも明らかであった。
目標を失った多脚戦車は正面衝突を避け、互いに停止。
隙をつかれまいとフィールドブレイズ側に近かった3番車が自然と前に出る形となり、続いて1番車もその後方で姿勢を整えていた。
「な、なんて軽く動きやがるんだ……!?」
「あの図体で……あ、あり得ん……」
鋼の巨体が自分達の仕掛けた攻撃を意にも介さず、実に軽々しく、ひらりと躱している。
それも、極めて人間の如く。
己が対峙している物は、実はとてつもない化物なのではないか?巨大ロボットだ、パワードスーツだと囃し立てていた者達の顔から、余裕などというものはとうに消え去っていた。
「当てるだけでいいんだ、焦るんじゃねぇ!転かしちまえば、それで終いだ!」
多脚戦車は軽やかなステップを繰り返す巨人に弄ばれ、かすり傷ひとつ付けられてはいない。
いよいよグーテンベルクの指示に怒気が混じリ始めるが、それも虚しく夕暮れに照らされた工場の壁に反響していた。
「さて、こんなもんでいいかな?」
マイクに乗らない程度の声で独りごち、操縦用の筋電位感知グローブから右手を引き抜いた。
E型コックピットは機体の動作を制御することに特化しているため、その他の機能を操作際には左右どちらかの腕を自由にする必要がある。
リナーシャは、やや汗ばむ手でコンソールのタッチパネルを操作して社内連絡用のチャンネルに無線を切り替えた。
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