第7話 今は、まだ


「へっ!どんなもんだっとぉ……ん……?」


そんな芸当をやってのけたリナーシャ本人は、さも当然の性能であると確信していたが、それとは同時に奇妙な感覚も覚えていた。


正体が掴めない、ある種において違和感とも呼べるそのフワフワとした感覚が一体何なのか。


咄嗟には見当がつかなかったが、何よりも今は憧れの人型のロボットを動かしている高揚感が勝っている。


次の瞬間にはもう、その違和感は無きものとなっていた。


「チッ、怯むな怯むな!足元を崩しちまえばそれでいいんだ!」


グーテンベルクは、あっけにとられていた部下達にに向かって声を荒げた。


巨大ロボットと言えど所詮は独活の大木だ。


人型であるが故に重心の位置が高く、バランスが極端に悪い。


そこを崩せさえすれば十二分に勝機はあると考えていた。


「りょ、了解!」


グーテンベルクの怒号を耳にし、我に返った戦車のドライバーはすぐさま車両を反転させた。


車輪走行で突撃を敢行した1号車の側面からも3対のアームユニットが出現。


6本の脚が絡まること無く巧みに連携し車体の向きを180度変えていく様は、さながら蜘蛛を彷彿とさせる動きだった。


これで多脚戦車2両がフィールドブレイズの前後から挟撃をかける形となった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る