第6話 静けさを切り裂いて
「どうなさいますか、少佐?」
指揮車のドライバーも兼ねていた副官がグーテンベルクに問いかけた。
「しゃあねぇ……1号車、3号車展開。目標を速やかに確保、無力化しろ。できれば無傷で、な」
「了解!」
命令を受けた脚戦車のドライバーたちは「待ってました」と言わんばかりにそれぞれのアクションを起こした。
1号車の車体側面からは2対の脚が現れ、車体は昆虫を思わせる形状に瞬く間に変化していく。
その間に残るもう1両は、車輪走行によるスピードを活かし、そのままフィールドブレイズの足元へ目掛け走りだした。
「懐に飛び込めば!」
だが、リナの反応はそれを上回った。
「おっと、危ねぇ!」
彼女の操縦するフィールドブレイズは、自らの股下へ突進してくる多脚戦車をまるで人間がそうするかのように、軽く鮮やかなステップで避けてみせた。
着地時には足部底面に装着されているSBR製のラバーソールから「プシュッ」と空気圧が抜ける音が響き渡り、その巨体が飛び跳ねることで発生させた巨大な衝撃を吸収していることを知らせた。
地面に敷かれたコンクリートを一切痛めていないことからもその優秀な衝撃吸収性が見て取れた。
「あいつ、あの巨体でジャンプしやがった!?」
「どうしてあんなことができる!?」
多脚戦車の突撃を軽々と回避した巨大ロボットを目の当たりにした国連軍兵たちは、口々に驚嘆の声を上げた。
脚式のユニットを装備した建機が世に出現し、街中で見かけることすら珍しくなくなった今日においても、これほど柔軟な運動性能と反応速度を実現した例はない。
そもそも脚式建機は建設現場の接地性や安定性の観点から、4本脚タイプを基本としている。
そのため、2足歩行を実現させているフィールドブレイズは、存在そのものが常軌を逸しているとも言える。
ましてや、最新鋭の高性能多脚戦車の限界というものをよく知るプロフェッショナルであるからこそ国連軍兵たちは、その荒唐無稽とも言える機動を素直に受け入れる訳にはいかなかった。
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