第3話 未来へ僕らは走る

「ところで話は変わるんだが……は、アンタが組み立てたのかい?」




グーテンベルクは、当然とも言える問いをマイクに投げかけた。


彼の目的は、目の前に直立しているロボットそのもの。


つまるところ、民間企業の私有物を接収する任務にあった。


対象は多脚式の作業用重機。


事前に聞かされていた話では未組立状態……つまりバラバラのパーツの塊であった筈だ。


それがどういう訳か、自らの脚で大地に立っているではないか。


ある程度組み上げられている事態も考えなくはなかったが、まさか稼働状態にまで持って来られていようとは流石に予想していなかった。


普段は何事にも動じず飄々としているタイプの彼であるが、相次ぐ想定外が重なってか、顔には若干の焦りの色が見えた。



刹那、この機械の塊を人型たらしめている最大の要素にして、胴体とは明らかに区別されるべきパーツ……すなわち「頭部」がゆっくりと旋回した。


そして、その中でも一際目を引く巨人の一つ目、メインカメラと思しき円筒状のパーツがギロリと動き、その赤く不気味な視線がグーテンベルクを捉えた。


「あぁそうさ!……まぁ、造ったのは親父だろうが、組み立てたのはあたしだ。どうだい、"フィールドブレイズ"は。カッコいいだろう?」



曰く、"フィールドブレイズ"なるロボットが再び言葉を発した。


頭部に備え付けられた外部スピーカーから大音量で発せらた声は、10代後半から20代そこらといった、若い女性のものだ。



「え、あぁ……まぁそうだなァ……」



返事もそぞろにグーテンベルクは、任務にあたって用意されていた資料を手元の端末へダウンロードしていた。

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