第2話 何かに引き寄せられ

そうだ。


これは、どうしようもなく男のロマンではないか。


しかし、この白銀の巨人は確かに言った。


、であると。


「……ってあれ?反応薄いなあ……」


可愛らしくも、荒々しい声を発するロボットを見上げる者達の顔には、ただ吃驚の表情が浮かんでいる。


「おーい?軍人さん?」


倉庫を含む工場の敷地は、国連軍により封鎖されていた。


故に、この巨大ロボットに対峙するのは当然ながら多国籍の軍人達だ。


彼らは工場の倉庫から数十メートル先にある敷地の正面出入口付近に陣を取り、「鋼の巨人」の動向を警戒している……はずだった。


「さすが日本というべきか……」


「これがクールジャパン戦略ってやつなのか?」


「極東の田舎くんだりまできた甲斐があったぜ!」


相対する軍人達は少々……というか多分に興奮気味であった。


なにしろ巨大ロボットとは、そこに立っているだけでロマンを掻き立てるものであるからだ。


殊に、軍隊という組織の中にはその手の趣味に理解がある者、むしろ積極的に嗜む者が少なからず含まれる。


それは、どこの国でも例外ではないようである。


「はいはーい!みんな、静かにして」


軍服を着崩した上官と思しき男が、騒ぎ立てるその他大勢の兵を無線でたしなめる。


その手でチャンネルを拡声器に変えると、今度はロボットに向かって呼びかけを始めた。


「あー、あー、繰り返す。こちらは、在日本国連軍特務支援部隊指揮官テーオドーア・グーテンベルク少佐。直ちに降機して、おとなしく身柄を引き渡しなさい……って言ってもまぁ、聞いちゃくんないんだよねェ……」


最後の方はマイクに乗せる意思もなかったようで、ため息混じりにそう呟くと男は軽装甲車の助手席のシートに深く沈み込んだ。

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