夢次元機アルマエレンシア

里奈加ひびき

第1章:彼岸の掌

第1話 交錯する運命

「スーパーロボットはだからな!」


白銀に光る鋼鉄の巨人は、少女の声でそう言った。




何の変哲もない田舎の町工場。


その一角にある倉庫で事件は起こった。


大勢の人間が詰めかけていると言った割には静まり返った辺り一帯。


その静寂をけたたましく破って、突如として現れたのは巨大ロボットだった。




昼下がりの陽光を照り返し、金属特有の鈍い銀光に輝く巨体。


目測で全高5メートル以上はあろうか。


人間と同様に四肢を持ち、自らの腕をもって倉庫の扉をこじ開け、仰々しく現れたその機械は、正しく巨人と呼ぶに相応しい体躯を持っていた。


しかし細部をよく見ると、巨人の身体を構成しているのは油圧式のシリンダーや電動アクチュエーターなど、どこにでもある建機や重機のそれである。


パーツ単体ではさして珍しくもない、所詮は「よくある部品」の塊である。




不思議と、そんな機械部品の集合が厳つくも美しい。


拳や頭部といった工業機械にはない部位が人体特有のシルエットを形作り、擬人化をさらに加速させている。


これは、ある種の現代アートとさえ形容できようものだ。




もっとも、それは姿形だけによるものではない。


その「動き」が妙に人間染みているのだ。


無機質な構造物が、まるで生モノのように動作している様。挙動の靭やかさが訴えかける美しさとは裏腹に、腸の奥底から来るような強烈な気色悪さを見るものに与えている。


巨大構造物に対する畏敬の感情も相まって、それは強烈な違和感として周囲にいる全ての人間の脳に刻み込まれた。




巨人を見上げる軍服姿の「兵士」達は口々に動揺と驚嘆の声をあげる。


ある者は往年の名作SFアニメに登場するパワードスーツを思い浮かべ、ある者は怪獣映画のやられ役メカの名を口にした。


作品内での呼び方や分類はともかくとして、いずれにせよそれらは「ロボット」という共通概念で一括りにできるものであった。




言うなればそう、これはを体現した存在である。

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