埼玉4126

すし山シャリ男

野菜炒め定食

 ここはよくある埼玉県は越日部谷ヶ島こすかべがやがしま市。市を分断する私鉄沿線各駅停車駅徒歩12分の6世帯築25年二階建アパート1階に住む舎人新田とねりしんでん復命ふたたびのみことの朝は、布団に転んだママでの「コロナは茶番」のような文字列を含むtwitterアカウントのブロックから始まる。よく耕されふかふかした黒土のような肥沃なタイムラインにするためにはブロックという名の適度な鍬入れは欠かせない。

 ひとしきりひととおり🧱ブロックした後、Twitterを始めてから今の今まで積み上げてきたブロック数を確認し思えば遠くに来たもんだとひとりごちて外に出る。自宅から最寄駅までの道中にある幹線道路沿いチェーンの定食屋に徒歩で向かい野菜炒め大盛り定食の食券を買い店員に渡す。この野菜炒めは化学調味料が丹念にまぶされているようで味の素味の素している旨味を感じた、気がした。言い換えればカット野菜の形状をした油を塗った味の素を食っている気がした。このような有無を言わさぬ均質的な安定感のある旨味というのもたまに食うと良いものである。野菜炒めの皿とは別に給された小皿に辛味噌のようなものが中さじ1すりきり程度についており、途中で飽きが来ぬよう味を変えて食える。おう、これはよいものだ。食い物に限らず外部からの刺激が単調に続くというのはミクロでもマクロでも緩慢なる自殺を導くというのが復命ふたたびのみことの持論である。では先程ブロックしたコロナ茶番野郎どもは単調ならざる刺激ではないのか。辛味噌のようなものと相似ではないのか。いや辛味噌は美味さというポジティブな体験を提供するがコロ茶が提供するのは空虚なエンターテイメントにすぎないなどと人生にもたらす好影響悪影響について米粒をサンバのリズムで口に運びながら茶碗が空になる。やれおかわりをしようと地面に固定された背もたれ無しの丸椅子から立ち上がり店内備え付けの馬鹿でかい炊飯器というか保温器の代わりに置かれているのボタンを押した刹那、異世界に連れてこられたのだ。


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埼玉4126 すし山シャリ男 @winterpoco

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