第二章

第二章

蘭と涼さんを乗せた車は、稲子駅から、三十分ほど走ったところにある、小さな家の前で止まった。まだ引っ越して、間もないせいか、女性は重森と名乗ったのに、表札には、川野と書かれていた。涼さんが気が付いてるのかは不詳だが、蘭はどうも変な家だなと思いながら黙った。

「じゃあ、降りてくれますか。今日はお手伝いさんが一緒だって、ちゃんと言ってありますから。」

と、女性は、二人を手早く車から降ろした。一体なんでそんなに人を運ぶのに慣れているのか、蘭は聞いてみたかった。

「はいどうぞ。こちらの部屋におりますから。早く、部屋を出て、外を出歩いてほしいなと思うんですけど。」

玄関のドアをあけて、すぐのところにある部屋に、クライエントはいるという。涼さんはいつも通り玄関から、クライエントさんの部屋まで五歩とか、そういうことをつぶやいて、玄関で靴を脱ぎ、部屋に向かって杖を使って周りを探りながら、部屋に向かった。蘭さんは、ここでまってて、と涼さんは言って、自分は、開け放しのドアから、部屋に入った。

「こんにちは。」

と、涼さんは言っている。

「ご気分は、いかがですか?今日は、暑かったり雨が降ったりして、変な天気ですね。」

「ええ。昨日は、また雨が降りました。すごい雨でした。ちょっと怖いくらいだった。」

と聞こえてくるのは、若い男性の声である。何だ、大したことないじゃないかと蘭は思ったが、涼さんは、かまわず話を続ける。

「そうですか。どうして雨が降ると、こわいと感じるんですか?」

「ええ、だって、雨が降ると、川が氾濫して、家がつぶれて、みんなどこにも行くところなくなるでしょう。すでに、一人ぼっちなのに、どうしたらいいのか。」

涼さんの質問に答えはそう返ってきた。まあ、雨が降ると必ず土砂災害警報が来るというというのは、最近常識になりつつあるが、でも、一寸極端すぎと蘭は思った。

「そうですか。雨が降ると、必ずそうなりますよね。最近は、どこで洪水が起きたのか、知っていますか?」

と、涼さんは聞いた。

「ええ、今年も、九州でありました。あそこは、住むことはできません。確か、大雨特別警報が出たとか。」

と答える重森さん。何を言っているんだ、九州と言えば遠く離れたところだろう。ここは静岡の富士宮じゃないか。と、蘭は思うのだが、

「ええ、だって、ここと柄が似てるから。」

と、答える彼。柄とはどういう意味なんだと蘭が思っていると、涼さんが、もう少しわかりやすく説明してくれというと、

「はい、だって、ここも、山に囲まれているし、大きな川もあるし、九州の特別警報が出たところにそっくりです。だから怖いんです。かといって、東京は、怖い病原体がたくさんあるでしょう。だからそこも住めない。でも、ここもそういうリスクを背負っているから、落ち着いて暮らせないのです。東京に行けば確かに、電車とかあって、ひとりで移動できて、どこかに遊びにも行けるけど、東京は感染者がやたら多いし。だから、こっちに疎開してきたんだけど、ここはここで、大雨が降れば、土砂崩れがあって、死ぬかもしれないし。」

という彼。彼の話は、どこへ行っても決着が付かず、彼はどこにいても落ち着いて生活ができないということを、一生懸命話すのだ。しまいには、もうこんなところにいるのは、できないとくちばしる。それを、涼さんはただうんうんと聞く。相槌を打つだけ。それに善悪の批評はしない。だれだれが悪いとか、原因も探らない。ただ、彼の話をちゃんと聞く。涼さんはそれに、徹底している。

「だから、ここにいるのも、雨が降れば怖くて落ち着かないし、電車も怖くて乗れない。もう、外何て地獄ですよ。いつ何が起きるかわからない、これは地獄ですよ。こんな地獄のような世の中はやくすてて、もう死んでしまいたい。終わりにしたい。終わりにさせてほしい。」

こんなセリフを、日常的に吐いていたら、確かに、家族にとってはいい迷惑である。でも、彼はおそらくその部分で止まってしまっているのだろう。そこから先へ進むことができないのだ。

「じゃあ、重森さんは、ずっと家にいるんだ。」

と、涼さんが言った。

「ええだって、安全なのはここだけですもの。何処かで一人になって暮らしたら、親に心配かけてしまうし、外へ出て、病原体を運んできて、親を殺したら、僕は殺人犯だ。そうなることもいけないから、ずっと家にいます。」

即答する重森さんに、蘭は、先ほどの女性の言葉を思い出した。

「早く部屋を出て、外へ出てくれたらいいのですけど。」

お母さんがどんな思いでそれを言ったのか、蘭は彼に聞かせてやろうかと思ったが、涼さんは、それを言わせないかのように、彼のつらいという話を聞いている。ただ、うんうんと言って、何もしない。質問もしなければ、否定もしないし肯定もしない。それが、涼さんのやり方だった。

「涼さん、何か、変えるということをしなくちゃ。ただ聞くだけでは、ダメでしょう。」

蘭は思わずつぶやいてしまうけれど、涼さんはそれを無視して、話を聞き続けた。

「それに、もう安全なところなどどこにもありません。どこへも出たくありません。病原体や、大雨などの災害から身を守るには、そういうことをしなければならないんです。それは、一番いい、災害から身を守る方法です。」

という、重森さん。確かに、そういうことは理論的に言ったら間違いではない。家にいて、外敵から身を守るということは、必要ではあるけれど、それをすると、引きこもりという症状に結び付く。だから、そこから抜けるように、治療をしなければならないのだ。

「だから、いいじゃないですか。自分の身を守るために、自分以外の人を守るために、僕はこの部屋から一歩も出ないのです。それが一番正しい方法です。学校に行くにしても、社会に行くにしても、今はそういうことをしていい時ではありません。」

まあ確かにそうなんだけど、彼の理屈は間違いなのである。本当は学校に行くとか、就職するのでもいいから、社会の一員として、何かに参加すること。それが一番なのだということを忘れてはいけない。最も、今は発疹熱の影響で、何もしていないで生きている人も多いかもしれないが、それは発疹熱が大流行しているという、条件のもとである。それがなかったら、単に、働かないで親のすねをかじっている悪人ということになってしまう。

だから、外へ出すように、もっていかなければだめなのだ。

「そうですね。それは僕もそう思いますよ。そういう理屈も、今だったら通じるでしょう。もちろん、発疹熱の流行から解放されたら、それは違うものになるのかもしれないけど。」

涼さんのセリフに、重森さんは、ええといった。

「そうですね。このパンデミックから解放されたら、僕も何かしようとは思っています。ずっと考えていた、文学賞を取るとか、そういうことです。僕は、もし家族全員生き残ることができたら、そのことを本にしたいと考えているんです。もちろん、家族一人でも逝ったら、僕はすぐに死にますけど。」

そうなのか。やっぱりそういう非現実的なことに、目が行ってしまうようになるらしい。文学賞何て、一般の人には、まるで勝ち目もないボートレースに、大金をかけているようなものである。

「そうですか。今でも、書いているんですか。」

と、涼さんは聞いた。

「ええ、それしか、気持ちや不安を整理するものはありません。今は人に会うのもいけないし、誰かを思ってもいけない。非常時だから、自分でノートに書いて、整理するしかないんです。」

涼さんには見えてはいないだろうが、蘭はその少年の部屋の壁を見た。ずいぶん穴が開いている。そして、机は、大学ノートが大量に散乱していて、中には刃物で切り刻んだ傷だらけのノートもある。

ずいぶん、暴れているんだなと蘭は思った。せめて、それだけをやめてくれれば、親御さんだって、暮らしやすくなるのではないかと思った。これでは確かに、住宅密集地ばかりの東京都内では、暮らしていけないだろうなとも思った。

「それなら、一寸、心の専門的な治療が必要なんじゃないか。ほらよくあるだろう。ラフマニノフが何とか博士のもとで受けたという、ヒプノセラピーとか。」

と、蘭は思わず口にした。そういう事を、勧めることも、涼さんはするのかなと思った。

「いいえ、うちにはそんなお金はありませんって、母が言っていました。これ以上家族を苦しめたくはありません。だから、僕が家にいるのが一番いいんです。それがなんで悪いことになるのか、わからないくらいだ。だって、災害や、疫病から身を守る方法はどこにも行かないのが一番だって、テレビのニュースでも言っているんじゃありませんか。」

という、重森さん。

「そうだけど、ほら、やっぱり、引きこもって、外へ出ないというのは、ね、君もわかるだろ。」

と、蘭が思わずそういうと、重森さんは、蘭をギロッとにらみつけた。隣にいたお母さんが、またこの目、なんでそんな顔をするのという顔で彼を見ている。確かに、意識の改革は必要だと思う。でも、その目でにらまれれば、怖くなって、何も言えなくなってしまうということもわかる。でも、それを武器にさせてはいけないということも蘭は知っている。

「でも、それよりも、今は生きることを考えないと。そのためには、お金が必要で、家の人に頼りっきりではいけないというわけで。」

と、蘭が言うと、涼さんが、

「蘭さん、それはやめてください。そういうことを言いふらすのは、援助者として、ふさわしくありません。」

と、言った。

「それが考えられれば、とうの昔に、解決するはずです。それができないから、こうして自分なりに考えた理屈を述べているのですから。」

「そうですか。でも涼さん、誰かが、それを言わないと、ダメなんじゃありませんか。誰かが、ダメと言ってやらないと。その関係をいつまでもだらだらしてしまっては、」

と蘭は言いかけたが、

「いえ。それはやめて下さい。その一言に、彼は非常に傷ついていらっしゃるから!」

と涼さんはちょっと強く言った。

「でも、、、。」

と、蘭は言うと、

「いいえ、それは仕方ないことなんです。そうなってしまったのも、仕方ないことです。ですから、僕たちは、それを矯正していくのではなく、傷口がふさがるのを待たなきゃダメなんです。僕たちは、彼の意識そのものに働きかけることはできないんですよ。あくまでも彼が古いものを捨てて、新しいものを取り入れられるようになるようにするだけのことです。人生を歩くのは僕たちではありません。彼の方なんですから。」

と、涼さんは、表情一つ変えないまま、そういうことを言った。涼さんが目が不自由でなかったら、どんな顔をして言うだろうか。笑って言うだろうか、泣いて言うだろうか。そういうことを涼さんが表現してくれれば、今回の来訪の意味も分かってくれるはずなのになと思う。

なるほど、パピルス船と涼さんが言った意味が少しわかってきた。

「それでは、僕たちは何のために、ここへ来たんでしょうか。」

蘭は、がっくりと肩を下す。

「いいえ、彼のいうことは、気にしないで結構です。あなたの事だから、気にしないで結構と言われてもお分かりにならないでしょうから、もう、彼のような理屈は自分には通用しないとあきらめてください。事実そういう事実を言っても、あなたが動けないことは、僕も知っていますから、大丈夫ですよ。僕は、あなたを裏切るような真似はしませんからね。」

と、涼さんは、そういうことを言った。そういうことを言って、また甘やかしているんじゃないですかと蘭は言いかけたが、涼さんの見えない目が少し動いたので、蘭はそれは口にしないで置いた。

ちょうどその時、重森家の玄関先に置いてあった時計が、鈍い音で小さな世界を奏でる。これはもしかしたら、母親が、つけたのかもしれなかった。こうして時間を知らせることによって、彼に自分たちは時間がないということを知らせているのかもしれない。それとも、涼さんが作戦の一部として置かせたのであろうか。

「ああ、お時間が来ましたね。それじゃあ、僕たちは帰りますが、また来週来ますから、よろしくお願いします。」

「ありがとうございました。」

と、お母さんが、涼さんに、謝礼と書いた封筒を渡した。本人ではなくお母さんが支払っている。其れもまた、蘭はむなしいなと思った。そして、次回は来週の今日ですねと確認して、手帳に書きこみ、涼さんと、蘭にお礼をする。涼さんは、正座していた床から立ち上がって、白い杖を頼りに、また玄関まで五歩と勘定しながら、玄関へ行き、手探りで靴を履いた。

「蘭さん行きましょう。」

と、涼さんがいうと、お母さんがああ私が手伝いますと言って、蘭の車いすを方向転換させた。お二人を、西富士宮駅まで送って差し上げます、とおかあさんは言って、二人を、先ほどの軽自動車の中に乗せた。その時、あの少年も、何かお礼を言えばいいのにと蘭は思ったが、少年は外に出るのが怖いのか、やはり見送りにも来なかった。

「稲子駅ですと、二時間以上電車が走っていない時間帯があるんです。なので、本数の多い、西富士宮駅まで、お送りいたしますよ。ちょっと山道走りますけど、酔うようなら、どこかで休むようにしますから。」

と、お母さんはそういって、軽自動車のエンジンをかける。

「いえ、稲子駅で結構ですよ。」

と涼さんは言うが、お母さんは、いいえ、西富士宮駅まで送ります、と言って、そちらの方向へ車を走らせ始めた。三駅分車で走るので結構時間がかかるとは言うが、あの不便極まりない駅で電車を待っているよりはいいだろうと蘭は思った。

「本当に今日はありがとうございました。お二人で来てくださって、私も励みになりました。」

とお母さんは運転しながら言っている。

「でも、蘭さん、今日は、余計なことを言ってくれましたね。」

と、涼さんは、表情を変えないまま、蘭にそういうことを言った。

「余計なこと、ですか?」

と蘭が言うと、

「ええ、余計なことです。あの、いつまでも一緒にはいられないというセリフです。」

と、涼さんは答える。

「ちょ、ちょっと待って下さいよ。僕はただ、一般常識として、そういうことを言っただけですよ。」

と蘭は、急いで訂正しようとするが、涼さんは、変わらない表情で、首を横に振った。

「いいえ、一般常識は、ああいうクライエントさんには通用しないんです。世の中には、一般常識として、伝えなければならないことは確かにあります。しかし、その方法が間違っていたために、常識として入っていかず、単に権力の濫用と、勘違いしてしまう人だっているんです。それを、矯正して、彼らにわかってもらうためには、彼らに、人間は怖いものではないと、知らせてやることが一番先なんですよ。自立とか、自分で何とかとかそういうことは二の次。其れよりも、人間を信じてもいいという許可を与えなければ次の段階には進めないんです。」

涼さんの表情は、目が見えないということで、まったく変わらなかったが、そういう事を言うのだから、お叱りなんだろうと蘭はわかった。

「今、あの重森君は、人間のやさしさとか、そういうものをまったく知らないんです。だから、自分だけの事しか考えられないんです。だから、それを感じさせてやる事がまず、重森君の症状を治す、第一歩です。」

「べ、別にさ、そういう事まで言わなくても。」

と蘭はいうが、涼さんはさらに続ける。

「ああいう、クライエントさんというのは、人間の言動に非常に敏感なんです。同時に不安をコントロールする力がまだない。だから、不安に襲われて、他人から見捨てられたということを感じさせないことが、僕たちにできることなんですよ。もし、この二つの感情がうまく制御できなかったら、自殺を図ってしまう可能性もなくはない。蘭さん、もし彼に何か発言するときは、もう少し慎重にすべきでしたね。」

「あ、あ、ああ、すみません、、、。でも、僕が行ったことは、時系列的に言えば、間違ってはいないと思うんですが。」

と、蘭はしぶしぶ謝ったが、涼さんはいきなり黙りましょうと言った。なんでだと蘭は思ったが、運転席から女性のすすり泣く声が聞こえてきたからだとすぐに分かった。

「あ、あの、すみません。僕たち、一寸声が大きすぎましたね。」

と、蘭は思わずそういうが、お母さんは、ハンドルを握ったまま、

「お二人が、裕の事について、そうやって話してくれて、裕は幸せ者です。今まで、そういうことをしてくれた大人というものは誰もいませんでした。裕が見てきた大人というのは、常識的なことは言うけど、まるでやくざの親玉みたいに、机を蹴飛ばしたり、目の前で怒鳴ったり、そういう大人しか見たことはありませんでした。」

といったので蘭はまたびっくりした。同時にお母さんは、それと正反対な存在になれなかったのかと思ったが、まるで答えを出すようにお母さんはこういったのである。

「いいえ、私は、裕にあんたは間違ってないと伝えることはできませんでした。幾ら私が、裕は間違っていないと言っても、裕は落ち込んでいくばかりでした。だから、私が先生にお願いしたんです。このままでは、裕も私もダメになってしまう。こういうことは家族だけではなく、外部の人にお願いしなきゃだめだってことが本当によくわかりました。そして、こういう人に頼んでもいいってことも、わかりました。」

「そうですか、、、。」

と蘭はお母さんのセリフを、頭の中で考察した。確かに、蘭のもとに来るお客さんもそうだけど、みんな、自分の味方になってくれる人は誰もいないという。なぜか、家族や兄弟が、あなたは間違っていないと本人に伝えても、それは伝わらない場合が多い。そういうことは、第三者に言ってもらったほうがよほどうまくいく。蘭がドイツにいた時、蘭が体調を崩したりしたら、養父たちはすぐにお医者さんとか保健士さんのような人に、相談に行っていた。欧米では相談するなんて、当たり前の事なのだ。でも、日本では、そうはいかないことが多い。なぜか知らないけれど日本では、負担を背負って涼しい顔をしているのをかっこいいと思ってしまう人が多いのだ。そして、問題が起きても誰かに相談することもなく、一人で勝手に行動を起こしても、涼しい顔をしているという人が多すぎる気がする。まあ、ひと昔前であれば、年長者と同居するのは当たり前だったので、年長者が問題解決を伝授するということもあっただろうが、今は年長者のいうことは、あまり役に立たない時代になっている。だから、誰にも相談できないということが多い。もし、年長者といることが負担になってきたのなら、トラブルが起きた時にその代理になるような人物が、欧米ではたくさんいるからそれで解決できるだろうが、日本ではそういう人物がなかなかいないのが現状である。だから涼さんのような商売がはやるのだ。

「ありがとうございました。西富士宮駅に着きましたよ。」

と、重森さんのお母さんは、西富士宮駅と書いてある建物の前で車を止めた。

「じゃあ、来週の今日も、ここでまっていてください。お二人に、稲子駅まで来てもらうのは、難しいでしょうから。多分、裕は、きっと大きなことでもない限り変わってくれないでしょうけど。それは遠い将来になると思うけど、私はそれが来るのを、静かに待っています。」

お母さんは、蘭を下ろしながら、そういうことを言った。蘭は、それが楽しみというのならお母さんはかわいそうすぎるのではないかと思ったが、涼さんは、彼も少しずつ前向きになってくれると思いますから、一緒に頑張りましょうと言って、車を降りた。

「一般車乗降場から、切符売り場まで16歩、、、。」

と言いながら点字ブロックの上を歩いていく涼さんに、蘭はなんだか、不安感というか、一寸、のんびりしすぎというか、危機意識がないと思ってしまったのである。でも、自分はあくまでもお手伝いだし、パピルス船を漕いでいるのはあくまでも涼さんだと思いなおして、切符売り場へ行った。

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