パピルス船
増田朋美
第一章
パピルス船
第一章
その日はやっと梅雨が明けそうになるかなと思われるほど、良い天気だった。その日蘭と杉ちゃんは、駅の近くの公園で、フリーマーケットが開催されるというので、それに参加するために、外出していた。本来は、発疹熱の流行のため、開催は危ぶまれていたが、それでも参加者全員がマスクをして、体調の悪いものは一切入れないという条件の元開催された。杉ちゃんと蘭も開催されることになって、喜び勇んで会場となる公園に行った。のだが、
「いやになっちゃうな。なんで僕たちは、車いすに乗っているからと言って、入場を禁止されちまうんだろう。」
と、杉ちゃんは、大きなため息をついた。
「まったくよ。熱があるわけでもないし、体調が悪いわけでもない。其れなのに、入場を禁止何て、まるで僕たちは、犯罪者みたいに追い出されちまったな。」
まあ確かにそうなのである。でも、蘭はある意味仕方ないよと杉ちゃんに言った。それはやっぱり、みんなの安全のためだもの、こういう人間が追い出されても仕方ないよ、と車いすを動かしながら、杉ちゃんに言ったのだが、杉ちゃんのほうは、そういう説明に納得する人ではなかった。
「なんでだ。」
と、杉ちゃんは蘭に言う。
「だってよ、僕たちは、悪いことしたわけでもないし、発熱もなければ、気分が悪いとか、そういう症状があるわけでもないんだぞ。ただ、歩けないだけなんだぞ。其れなのに、なんで追い出されなきゃならないんだよ。ある意味では、人種差別にもなるんじゃないの?」
杉ちゃんの言い方は、一寸やくざの親分に近い言い方なので、蘭はそれを抑えるのに苦労するのである。
「まあ確かに悔しいけどさ、こういう人間に対して冷たい世の中はこれからも続いていくさ。だから、それで仕方ないと思ってさ。お茶でも飲んで帰るか。」
蘭は、杉ちゃんにそういって、富士駅に行くように促した。杉ちゃんも、あーあ、全くよ、なんて言いながら、蘭と一緒に、富士駅へ向かって移動していった。富士駅は、もともと利用者が少ないせいなのか、発疹熱流行の前後と、たいして利用者の数は変わっていないように思われた。特に、田舎電車と言われている、身延線のホーム何て、いつもとほとんど変わらず、五、六人くらいしか、人が電車を降りてこない。
杉ちゃんと蘭がちょうど身延線の改札口の近くを通りかかったときの事であった。なんだか聞き覚えのある声で、
「エレベーターの入り口から、改札口まで、13歩。」
という声が聞こえてきたので、杉ちゃんと蘭はそのほうへ振り向く。すると、改札口から、切符を駅員に渡して、盲目の療術家である古川涼さんが現れたのである。
「おい、涼さんじゃないか。」
と、杉ちゃんが言うと、涼さんは歩くのを止めて、その場に止まった。
「どうしたんですか。身延線に乗って、何処か出かけたんですか?」
まさか、観光旅行に来たわけではないよなあと思いながら、蘭は涼さんに言った。
「ええ、一寸事情がありまして、稲子まで行っていたんです。」
と、涼さんは、蘭と視線を合わせられない目でそういうことを答えた。
「稲子。はあ、またずいぶん遠くへ行くものですね。おひとりでいかれたんですか?」
「ええ、クライエントさんが、車の運転ができない方でしたから、稲子駅まで電車でいき、後はバスで行きました。」
蘭がそう聞くと涼さんは、そういうことを答える。稲子駅と言ったら、芝川駅よりも遠いところにある駅であり、身延線の中でも有数の秘境駅だった。
「そうか、じゃあ、そんなところに行ったんじゃ、ご飯何てまだ食べてないだろう。僕らも実はまだなので、そこのカフェで食事でもしていかない?」
杉ちゃんがそう提案すると、涼さんはそうですねといった。稲子駅の周りは、何もないとクライエントさんに聞きましたと言って、笑っている。身延線の駅と言えば、西富士宮駅以降は、山岳地帯に立っていることが多いから、当然、ファミレスのようなものは駅周辺にない駅ばかりなのだ。目が見える人であれば、富士宮駅で途中下車して、駅ちかのショッピングモールによることもできるが、涼さんにはそれは無理だった。
「よっしゃ、カフェでたべようぜ。」
と、杉ちゃんがカフェに向かって方向転換すると、蘭は、涼さんこちらです、と涼さんの腕をつかんだ。涼さんは、蘭に助けてもらいながら、駅中のカフェに入った。
カフェに入ると、人はさほどいなかった。多分、長時間駅に残っていたい人なんておらず、みんな駅から出てしまうのだろう。そのほうが確かに安全であるから。
蘭たちは、ウエイトレスに助けてもらいながら、一番出口から近い席に座らせてもらった。メニューは、蘭が朗読して、それぞれの食事を決めた。数分して蘭たちの前に、ピザとパスタが並べられると、杉ちゃんはすぐにパスタにかぶりついた。
「で、それで、今日は、稲子まで、わざわざクライエントさんの家にいったの?」
杉ちゃんが、パスタをたべながらそういうことを聞く。
「ええ、依頼されれば、どこへでも行きますよ。」
涼しい顔をしていう涼さんに、
「それでも、稲子駅とか、そういう駅は、一寸行きにくいのではありませんか?」
と、蘭は聞いた。確かに、身延線には障碍者には利用しにくい駅も多数ある。稲子駅もその一つで、山岳地帯に囲まれた駅ということから、いい観光スポットではあるが、エレベーターとか、点字ブロックは設置されていないのだ。
「もうそう言うことは仕方ないじゃないですか。幸い、バスがすぐにあったから、良かったですよ。」
と、涼さんが言っても、蘭は、バスは一日三本しか走ってないことも知っていた。それも不便だったのではと聞いてみると、
「ええ、かなりの時間、待たなければなりませんでしたが、それもそういう事情なのですから仕方ありません。でも、おかげさまで、長時間セッションをすることはできましたから、それはよかったと思います。」
と答えが返ってくるので、本当にプラス思考だなと蘭は感動してしまった。先ほど、自分たちが、イベントの会場に入れてもらえなくて、ブツブツ言っていたことも、こうしてプラスに変えてしまうことができたら、いいのになあと思う。
「でも、ほんと、そういうところまで行かなきゃならないなんて、涼さんも大変ですね。稲子駅も不便な駅だし、バスだって、田舎ですから、一日にそんなたくさん走ってないでしょう。そんなところに、わざわざ行くなんて。」
「いいえ、来てくれと言われたら、いかなくちゃいけないでしょう。逆に電車があるだけよかったと思うようにしなければ。そうやって施術者を欲しがっているクライエントはたくさんいるんですから。」
蘭がそういうと、涼さんは明確に否定した。
「しっかし、そんな不便な駅へ施術に行くなんて、僕たちは、とてもできない。その人、何か問題でもあるんですか?」
蘭が思わずそう聞くと、涼さんはこう答えを出した。
「ええ、彼は、東京から稲子に疎開されてきたんです。東京では、発疹熱がさんざん流行っているから、精神状態が不安定になるので、あまり人と接しない稲子にいらしているんですよ。それでも、やっぱり不安なんでしょうね。こうして僕のところに、お願いに来るんです。疎開している人ばかりじゃありません。ほかにも、話を聞いてほしいという人はたくさんいます。中には具体的に何かが見えて怖いという人もいるし、声が聞こえてくるだとか、そういう人もいます。でも、そういう人だからと言って、話を聞いてもらう権利は、はく奪されているわけではありませんから。僕たちは、彼らの、話を聞くことで、彼らを、不安やつらさから、離れさせようという狙いがあるわけです。」
疎開何て、戦時中じゃあるまいし、何て古い言葉を使うのだと蘭は思ったが、
「まあ、疎開じゃなくて、転地療養といった方がいいかもしれないな。」
と杉ちゃんが言うので、その通りだと思った。
「ええ、正確に言えば、その人は、対人恐怖になってしまったんですね。人というより人が病原体を運んでしまうというところから不安定になってしまったんでしょう。そういう人は、ご家族だけではとても対応しきれませんよ。ご家族だって、精神疾患の知識があるわけじゃない。いきなりおかしなことを言われても、困るだけでしょう。だから、僕たちみたいな療術家が必要になるわけですよ。其れには、盲人であろうと、健常者であろうと関係ないことです。」
涼さんは、そういうことを言った。蘭は、確かにすごいなと思った。同時に、自分たちが、大変なマイナス思考であることもわかって恥ずかしくなった。
「涼さんすごいですね。そんなことできちゃうなんて。ほんとすごいですよ。僕は、一応、刺青師として彫ることはできても、そうやって、人の心まで動かしてしまうことはできないですよ。ほんと、尊敬します。」
蘭は、そう涼さんに言うと、涼さんは、普通の人にありがちな照れそうな顔も何もしなかった。ただ、こういう事を言うだけであった。
「いいえ、僕たちは、ただ、話を聞いてあげるだけです。それをどう解釈して、どう変えていくかは、クライエントさん自身です。僕たちは、ただ、援助してあげるだけ。」
「でも、一人で稲子駅まで行っちゃうんですから。僕はとてもできないです。そんな稲子駅みたいな秘境駅、とてもいけない。」
と、蘭は涼さんにそういった。
「それに僕たちは、悩みごとがある女性の体に、花とか龍とか縁起の良いものを彫ってやるだけで、その人たちの、リストカットとか、そういうものをやめさせるということはできないわけですから。」
「そうですか。でも、蘭さんは、花や龍を彫ることで、その人たちの傷を消すことはできるわけですから、僕たちとは、また違うものになりますよね。」
「おいおい、それでは、いつまでも決着がつかない、三竦みみたいになっちまうじゃないか。」
と、蘭と涼さんがそう話していると、杉ちゃんが二人の間に割って入った。
「まあ、決着のつかないことはやめにしようぜ。二人とも、困っている客を何とかするっていう使命感があるんじゃないか。お前さんたちは、すごいことやってるんだから、それぞれのできることで、お客さんを何とかしてあげればいいの。」
「そうだね、杉ちゃんの言う通りだ。でも、僕はすごいと思ったよ。あんな山の中の秘境駅まで、一人で行って、そこの近くに住んでいるクライエントさんのところまで行けるんだからさ。僕は、その使命感に感動した。それは三竦みじゃなくて、誉め言葉として、涼さんに送ってもいいかな。」
と、蘭は、急いで涼さんのほうを向いて、そういうことを言った。涼さんがもし、目が不自由でなかったら、蘭が心からほめていることが伝わるだろう。でも、涼さんにはそれはできない。なので、蘭はそういう言い方をするのである。
「ありがとうございます。でも、もし僕は盲人でないとしても、彼の施術を引き受けるのであれば、引き受けると思います。」
と、涼さんはそういうことを言った。表情が変わらないから、うれしいのか照れくさくてそういっているのか不明だが、涼さんはそういったので、蘭は自分の気持ちは受け取ってもらえたのかと思う。
「まあ、良かったじゃないか。お互い客を何とかしてやれる商売やってるんだからよ。それが、一番いいことだと思っておけや。」
杉ちゃんがそういうと、蘭は、
「いや杉ちゃん。僕と涼さんを比べないでくれ。僕は、涼さんみたいに、一人で秘境駅まで行くなんてことはできないんだからね。いいか、秘境駅には、点字ブロックはないんだよ。それに、発車メロディだってならない場合もある。そういうことを乗り越えて、クライエントさんのお宅まで行ってしまうのがすごいと言っているんだ。」
と、言った。
「ほんなら、蘭も修行させてもらえばいいじゃないか。ぜったいできないとお前さんは言うが、お前さんだってできることはあるんだぜ。そんなに感心しているのならよ、思い切って涼さんと、一緒にやってみればいいじゃないかよ。」
杉ちゃんがいきなりこういうことを言いだしたので、蘭は、思わず、驚いた顔をする。涼さんは、表情が変わらなかったが、杉ちゃんにそういうことを言われて、やっぱり驚いているようだ。
「其れなら、一緒にやってみな。蘭も、誰かに手伝ってもらえば、秘境駅のクライエントに会いに行けるさ。涼さんだって、電車の運転手に手伝ってもらったりしてるはずだよ。僕たちは、できるわけないんだからよ。僕も、接阻峡に行ったときは、弁蔵さんに手伝ってもらってたし。」
と、杉ちゃんに言われて、蘭は、そうだねえといった。
「よし、それでいいじゃないか。涼さんの施術に、蘭も同行させてもらえばいいんだ。それでお願いしてみろ。」
杉ちゃんは、そういっている。
「そうだねえ、涼さんが、邪魔でなければ僕も手伝います。ちょっと見学させていただきたいです。」
と、蘭は、涼さんに言った。
「見学って、大したことしていませんよ。僕たちはあくまでも、彼らの話を聞くだけですから。強引にたとえていえば、大きな川の流れをちょっとだけ止める、パピルス船のようなものです。帆を張った立派な船にしてもらうことは、僕たちにはできません。」
と、涼さんは言うのであるが、蘭はぜひお願いしたいといった。自分も、どっちにしろ刺青を入れる前後には、お客さんの悩んでいることを聞かなければならないのだ。それの回答として蘭は、花屋龍を彫っている。その回答があっているというか否かは、お客さん自身の判断によるが、蘭はそうなるんだと解釈している。
「パピルス船でも構いません。パピルス船も、複数でやれば、和船に変わるかもしれないし。僕も、何か涼さんの手伝いをしたいです。」
と蘭は、涼さんに向かって頭を一つ下げた。でも、涼さんには見えないから、返事はできないと思うのだが。
「それでは、了解です。蘭さんも、施術を見学してみてください。」
と、涼さんは、蘭が頭を下げたのを確認することはできないが、ちゃんとそれを受け取ってくれたようである。
「じゃあ、定期的に富士駅で待ち合わせして、会うようにしますか。また、一週間後にこちらに来ますから、そのときにここで待ち合わせしましょう。」
「了解ですよ。それでは、僕も、車いすの身ではありますが、頑張ってお手伝いができるように頑張りますので。」
と、蘭は、そういうことを言った。杉ちゃんが、二人のやり取りを見て、
「よし、新コンビ、パピルス船の登場だな。」
とカラカラと笑った。
そして、何日か過ぎて、また一週間たって、蘭は、涼さんと約束した朝の九時に、富士駅へタクシーに乗っていく。そして、待ち合わせ場所である、身延線の改札口へ行った。涼さんは、蘭より先に来ていて、また白い杖で周りを探りながら、改札口から、エレベーターまで十三歩と口にしながら歩いている。
「涼さん。」
蘭は、急いでSuicaを出して改札し、エレベーターの前で押し釦を手探りで探している涼さんの肩をたたいた。
「あ、どうもおはようございます。よろしくお願いします。」
涼さんはエレベーターを眺めたまま、蘭に挨拶をした。蘭は代わりに押し釦を押してやった。エレベーターのドアが開きますの合図で、二人は、エレベーターに乗り込んだ。そして、身延線のホームに降りた。
「まもなく、二番線に、普通列車、甲府行きが、二両編成で到着いたします。危ないですから、黄色い線の内側まで下がってお待ちください。」
と、アナウンスが流れるが、黄色い線と言われても涼さんは困るだろうなと蘭は思った。一応、黄色い線は、点字ブロックになっているから、その線の外側に飛び出す心配はないのだが。
ガタンゴトンと音を立てて、疲れた電車が蘭の目の前にやってきた。ドアが開いて、お客を全員出して、そしてまた甲府へ引き返すために、簡単な掃除をして、座席を反対方向にして、電車はまた客を乗せるのだ。蘭は運転手に手伝ってもらいながら、涼さんと一緒に、電車に乗り込んだ。電車は、運転手のみのワンマン運転。車内改札などはなく、女性の声のアナウンスで、発車いたしますという声がして、電車はガタンゴトンと、地方交通線らしいのんびりペースで走り始めた。
富士駅から富士宮駅くらいまでは、普通に街の中を走っている電車という感じだった。まだ東京都内でも、このような、街並みがあるのではないかと思われる市街地。確かにドアが押し釦で開閉しなければならないというのは田舎電車であるが、それでもまだ、客の乗り降りがある、駅として建物になっているタイプの駅であった。まだ、エレベーターもあり、階段もあり、ちょっとした売店や切符売り場も備えている駅である。
しかし、西富士宮駅を過ぎると、電車の周りは、森ばかりの風景に変わった。あるのは、森と、茶畑と、あとはちょっとした、民家があるのみである。そのような場所に、ホームと小さな待合室のみの小さな建物という作りの駅が立地するようになった。もちろん、エレベーターもないし、切符売り場もない。切符は、電車を降りる際運転手が、回収するというやり方になっていた。駅舎らしいものもなく、ただ、森の中にホームがむき出しの状態で立っているような、雨が降ればもちろん濡れるし、風が吹けばもろにあたる建物の駅である。
「まもなく、稲子、稲子に到着いたします。この駅では後ろの車両のドアは開きません。お降りの方は前の車両からお降りください。」
と、車内アナウンスが流れて、蘭は涼さんに、ドアのほうへ行こうと促した。車いすのどこかを触っていてくれれば案内するからといった。涼さんは、いつもの通り、座席から、ドアまで五歩と勘定しながら、蘭と一緒にドアのところまで行く。身延線のドアは、自動ドアではなく、押し釦を押して開閉するようになっている。稲子駅で降りることは、富士駅で駅員に伝えておいたので、稲子駅で運転手が一度電車の外へ出て、蘭たちに渡り廊下を整備するという形にしていた。蘭は、ありがとうと言って、電車を出た。涼さんと一緒に電車を出ると、電車は標準の発車時刻より五分くらい遅れて、発車していった。この駅では電車に新たに乗りたいという客もなければ、降りたいという客もない。なので多少発車時刻を遅れても、誰も文句言う人はいなかったのである。
さて、蘭は、駅のホームを見渡した。確かにこの駅は誰も人がいない。周りに、民家はないかと思ったら、どこにもない。まさしく、稲子駅は、森の中の秘境駅ということになっていた。駅のホームを降りるには、階段を降りなければならなかった。しかし蘭は階段を降りられない。涼さんも蘭を手伝うということはできなかった。さて、これからどうしようと蘭が考えていると、
「あの、古川涼先生でいらっしゃいますよね。」
と、一人の女性が駅の外から、声をかけてきたのだ。
「ええ、そうです。」
と、涼さんが言うと、
「ああ、あの、重森の母でございます。」
と、彼女は答えるのである。
「あの、涼さんのクライエントさんの?」
と、蘭が聞くと、
「ええ。重森です。今日は、二人で見えてくださるというので、迎えに参りました。そちらへすぐ行きますから、一寸待ってください。」
と、彼女は、急いで駅のホームに現れて、蘭を車いすごと持ち上げて、階段から降ろした。階段は、数段しかなかったので、すぐに降りていくことができたのだ。それになんで女性なのに自分を持ち上げることができたのか、と蘭が思っていると、
「ええ、息子を動かしたことがありますから、それで力もついたんでしょ。」
と、彼女は言うのである。
「じゃあ、車に乗ってください。」
と、蘭と涼さんを彼女は手早く車に乗せた。軽自動車だったけど、蘭を乗せることはちゃんとできた。それでは、乗っていってくださいといって、彼女は、車を動かし始めた。
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