エピローグ
エピローグ
「まさか二人がつき合うことになるなんてね」
上戸美姫が弁当のおかずをつつきながら笑った。
「僕は最初からお似合いだと思ってたぞ」
誇らしげに君津雄大は胸を反らした。
松成敬輔は隣に座る甘木奈々子に笑いかける。
大声で告白した次の日、つき合って二日目。今日は四人で教室で弁当を食べている。
「一時はどうなるかとおもったけど」
敬輔は申し訳なさそうに下を向いた。
「結局あたしのパンツを盗んだ人はいなかったってわけね」
上戸も申し訳なさそうに下を向く。
「いや、そもそもわたしのお父さんがもうちょっとしっかりしてたら」
つられるように奈々子も下を向く。
「でも、そもそもなんで僕らが盗んだと思ったんだ?」雄大は上戸に訊ねた。
「だからそれは、敬輔と雄大が濡れた自分たちのパンツのこと話してるの聞いて、てっきりあたしのパンツを盗んでそれを笑ってるのかと思ったの。ほら、一ヶ月前に雄大を振ったからその腹いせなのかなと」
「僕はそんな幼稚なことしない」雄大が不満そうに答える。
上戸はちょっと面白そうに笑った。
「いやー、おれもラブレターが机の中に返されてるの見てほんとにショックだったよ」
「ごめんごめん。誰宛かわからなくて、とりあえず返したほうがいいかなって思ったの」奈々子が恥ずかしそうに笑う。
「それで、そのラブレターは渡せたのか?」雄大が訊いた。
「いやいや、もう必要ないでしょ」敬輔が慌てて言う。
奈々子に読まれる前に捨てられて本当によかった。あのラブレターが読まれていたら告白も上手くいかなかったかもしれない。
そこで上戸がにやにやと笑みをこぼした。
「なんだよ」敬輔が不満そうに言う。
「いや、あたし自分のパンツ探すために色んなとこ見て回ったんだ。それで、もしかしたら捨てられたのかもってゴミ箱も色々漁ってみたの。そしたらさ、教室でとてつもなく面白いものを見つけちゃって」
敬輔の顔がみるみるうちに青白くなっていく。
ちょっと待ってくれ。あの手紙はびりびりに破いて捨てたはずだ。
「えー。もしかして」
そう言う奈々子の顔は期待と恥ずかしさが混じっている。
「それじゃあ、今から読み上げたいと思います」上戸は咳払いを一つして、スカートのポケットからセロテープで継ぎ接ぎされた手紙を取り出した。「好きって気持ちは」
と敬輔は慌てて上戸の口を塞ごうと身を乗り出した。その手を上戸はひらりと躱す。
「ちょっとそれだけは勘弁して」
「えーどうしよっかなー。奈々子も聞きたいでしょ?」
奈々子は顔を赤らめて逡巡するような表情を見せた後小さく頷いた。
「それでは期待に応えて」
「うわあああああああああ」
敬輔は奈々子よりも顔を真っ赤にして上戸につかみかかった。
がたがたと机や椅子のずれる音が教室に響く。
騒動を見ながら笑っている生徒の姿。
教室の後ろでは新しいロッカーが光を反射している。
窓の外は綺麗な空が広がっている。
果てしなく続く空。
果てしなく続く未来。
世界は明るい声で満ちていた。
空前絶後のラブマゲドン 山橋和弥 @ASABANMAKURU
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