甘木奈々子

26-1

 甘木奈々子は掃除用具入れの中で揺られながら、これはこれは困ったことになったぞと頭を悩ませていた。

 このまま教室に運ばれたら父を待つことができない。世界の危機だなんてことは簡単には信じられなかったが、父がそれを信じてかつ助けてほしいと願っていることはわかった。父の望むようにしてあげようと思った。今までも意味のない嘘をついたところは見たことがない。今度のことにもきっと理由があるはずだ。

 それよりも、ラブレターが嘘だったというのがどういうことだろう。

 今日一日誰宛なのかあそこまで悩んだのに、それは全部無意味だったのだろうか。

 ラブレターが嘘ってどういうことだ。勘違いってなんだ。

 敬輔が渡したラブレターって結局何だったんだ。

 考えてみるが答えは出てこない。

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