NASAの男・甘木秀彦

19-1

 愕然とした。娘の、奈々子の下着を手に入れたと思った。これで世界が救える、愛する妻と娘の笑顔を守ることができるはずだった。

 甘木秀彦は校舎の二階の隅で震える手で下着を持ち上げた。

 これは違う。これはシンパシムが含まれている下着じゃない。

 ああ。もしかして間違えて持ってきてしまったのか。

 口元に近づけて臭いを嗅いでみる。

 ああ。全然違う。シンパシムの臭いがまったくしない。

 失敗だ。

 とにかくもう一度奈々子の教室に行こう。この下着を返して、時間が惜しいがちゃんとすべてを説明しよう。

 奈々子は頭のいい子だ。きっときちんと理解して下着を渡してくれるはずだ。

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