楽しい源氏物語

第14話 セックスレス 花散里

　源氏には若い頃からずっと付き合ってきた花散里（はなちるさと）の君という女性がいます。この姫君は、器量は今一つですが、何事にも控えめで、謙虚で、おっとりしたとても穏やかな人でした。

　源氏が六条邸へ女君たちを集めて住まわせるようになってから、花散里の君も六条邸に移りました。源氏は紫の上と仲睦まじく暮らしているので、花散里の君のとことへのお運びはあまりありません。それでも、たまにたずねると、穏やかで、どこまでも控えめな女君に源氏は癒されるのでした。

　女君は、源氏ともうエッチをしようとなさいません。源氏も無理にとは思わず、共寝はしません。セックスレス夫婦です。それでも、この２人の間は、しっくりとうまくいっているのでした

　光源氏は、息子の夕霧に、この花散里の君のお世話をするように申し付けます。決して、間違いの起こるような２人ではないので、何かにつけ、花散里の君は、夕霧を頼りにしています。そして、自分自身も夕霧の母親がわりのように、お世話をやくのでした。

　この花散里は源氏物語の中で、読者をほっとさせる女君として描かれています。六条の御息所のような激しい嫉妬心がなく、何事にもおっとりと、鷹揚に構えていて、源氏が気を使わなくてもいい、癒される相手です。

　セックスレスになっても、いい関係を持ち続けた光源氏と花散里の君。後年、嫉妬の感情に悩み苦しんだ紫の上と比べると、花散里の君は、そういう感情から解放され、源氏がどんな行動をとっても、穏やかに心静かに控えめにひっそりと生きた幸せな人生だったと思います。

　読んでいただきありがとうございました。