第13話 我が子との別れ 明石の上

  光源氏には、娘がいます。この娘は、朧月夜の君との不倫などから、官位をはく奪され、罪に問われる前に、自ら、須磨へ下った、その時に、須磨から近い明石で、明石の入道の娘明石の上との間にできた娘です。


 やがて、京から、源氏に京へ帰るようにとの宣旨が下され、源氏は、妊娠中の明石の上を置いて京に帰ってしまいます。いずれ、京に呼び寄せるからと固く約束して、2人は別れます。やがて娘が生まれ、明石の地で育てられます。


 やがて、明石の上は母親と一緒に、京に上って、仮住まいに住んで、そこで姫を育てます。源氏は、明石の上に、姫の将来のためには、姫を紫の上の元に預けて育ててもらうのが一番だと提案します。まだ幼い姫と別れるのは、身を切られるようにつらいのですが、いろいろ思い悩んで明石の上は、姫を紫の上に託すことを決心します。


 源氏はそんな明石の上の心を思うと不憫でしょうがないのですが、姫の将来のためにもこれしか道はないと思うので、姫を引き取り、二条の屋敷に連れて帰ります。


 紫の上は、この姫をことのほか可愛がります。最初は母親を探して泣いていた姫も、次第に紫の上に慣れてきて、2人は仲良く暮らします。


 やがて、明石の上は、源氏や紫の上の住む六条の院に、住むようになります。でも、明石の上が姫に会うことはありません。あくまで、産みの親として、影となり過ごすのでした。そんな明石の上を源氏は不憫にお感じになります。


 幼い姫を、どんな気持ちで紫の上の託したのか、それを想像するだけでも、明石の上は本当につらかっただろうと思います。それでも、姫の将来のため、身分の低い自分の元に置いておくわけにはいかないと決心して、敢えて、我が子を手放します。


 私は、この時の明石の君の気持ちが痛いほどわかります。


 それは、そこまで幼くはなかったけれど、私も、子供たちの将来のことを考え、娘が18才息子13才の時に、手放したからです。


 そして、自分から会いたいなどとは絶対言わず、子供たちが私と会いたい時だけ会うという離婚調停での約束を守りました。


 明石の上はその後、明石の姫君と、お互いの本当の関係を知って、やがて、中宮となった明石の姫君を助けてお側でお世話するようになります。


 今は、私の娘も息子も、それぞれ独立して、生きています。


 でも、もし、別れるのが、もっと幼い頃だったとしたら、私は、とても耐えられなかったと思います。自分の運命を呪い、死んでいたかもしれません。


 だからこそ、この明石の上というひとは、忍耐強く、聡明な女性なのだろうと尊敬します。そして、その忍耐が人生の後半では報われるのは嬉しいことです。


 私も、いつか報われる日がくるのでしょうか。


 いつか、娘や息子と一緒に、会える日がくるのを楽しみに、今は自分の人生を生きていくだけです。


 読んでいただきありがとうございました。


 

  

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