第12話 出会いがしらのエッチ 朧月夜

 「朧月夜に似るものぞなき」

 と口ずさんで歩いてきた女君を光源氏は細殿に抱き下ろしてしまい、そのままエッチしてしまいます。場所は光源氏を心の底から憎んでいる弘徽殿の大后の住まう場所。なんと大胆な行為に及んだものか。

 女君は、これが光源氏だとすぐにわかって、受け入れます。最後に2人は互いの扇を交換してあわてて別れます。

 源氏には、この姫が、誰なのかわかりません。ただ、弘徽殿の大后の妹君の1人だろうとは想像できます。

 やがて、右大臣家の藤の花の宴に招かれて、それとなく探したところ、右大臣の六の君(朧月夜の君)だったことを知ります。

 六の君は、帝に参内する予定でした。しかし、源氏とエッチして、もう処女ではないので、女御として参内することはできません。でも、帝の願いもあって、尚侍ないしのすけとして宮中に参内します。源氏とのエッチのせいで、処女ではなくなったので、正式な入内ができなくなってしまったことは、右大臣も弘徽殿の大后も恨んでいます。それでも、帝のご寵愛がひと方ではなく、常にお側に置かれる様子なので、何とかホッとしているのでした。

 ところが、帝にこれだけ愛されながら、朧月夜の君は、光源氏への思いを捨てきれません。帝や右大臣や弘徽殿の大后の目を盗んでエッチを続けます。やがて、右大臣に、逢瀬の現場を見られて、光源氏と朧月夜の君の不倫はばれてしまいます。

 どこまでも、大胆不敵な源氏も、これで、さすがに、窮地に追いやられます。帝への謀反の心ありと弘徽殿の大后などは騒ぎ立てます。

 こうして、さすがの光源氏も、罪に問われる前に、自分から都を離れようと、須磨へと旅立たれるのでした。

 帝のそれも兄帝の女に手を出して、光源氏はどこまで自分勝手なのかと思いますが、どこか「自分は光源氏だから何でも許されるのだよ」という気持ちがあるようで、困ったものです。

 また、朧月夜の君は、その後も光源氏との関係を続けます。こちらも、帝と光源氏と二股かけてなんと浮気な人だろうと思いますが、この時代に、自由に恋愛をして、どちらからも愛され、幸せな人かもしれません。

 朧月夜の君は最後は出家します。愛したいように愛して、そして、俗世を捨てる。信仰心厚く何度出家を願っても源氏から許されなかった紫の上からしたら、なんて自由で幸せな人生でしょう。

 朧月夜の君は自分に正直に生き、愛し、最後には俗世を捨て、実にさわやかに描かれています。このキャラはたぶん、源氏物語の中で、人気があるキャラではないかと私は思います。


 読んでいただきありがとうございました。

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