第26話 予言?

「忠澄のいつもの予言というやつか」

 元親の顔は、少し緩んでいた。忠澄の勘というか、予言というのか、恐ろしさを感じるくらい当たる時がある。今回も、忠澄の予言?が的中するのか。屋敷の奥から従者が歩いてくる。

「忠澄、また当たったのか?」

 元親が命令するまでは、誰も近づかないように伝えてある。ただし、重要な伝達などは別の話だ。従者が近づいてくるという事は、重要な事だとわかる。従者が近づき、手にしていた書状を忠澄に手渡した。忠澄は、チラッと確認しただけで、そのまま元親に書状を差し出す。

「やっと、届いたか。腰の重さは、相変わらずだな」

 中身を確認すると、想像していた内容だったのか、すぐに忠澄に渡した。

「公方様からも、信長討伐の朱印状が来た。大義名分は出来たな」

 十五代将軍、足利義昭は、信長によって京から追われた。しかし、鞆の浦で再起を狙っていた。京にいなくても、幕府の長であり、征夷大将軍という肩書は変わりなかった。幕府というものが機能していなくても、二百年以上も続いた幕府の権威は、まだ完全に失われてはいなかった。信長と戦う大義名分と、毛利という同盟も得た。あとは、元親が決心するだけだった。あとは、後方から明智の加勢があれば、元親の計略は完成する。

「忠澄、公方様にお礼の品を手配しろ。京とは違い、鞆の浦では色々と物入りだろう」

「すぐに手配いたします」

 元親の義理の父、石谷光政は、先の将軍、足利義輝の側近でもあり、光政の人脈も使い、足利義昭と交渉することができた。義昭としても、信長と敵対する勢力であれば、味方なのだ。幕府の再興を願っての事でもあったが、戦国乱世の時代になり、権威だけでは人は動かなくなっていた。幕府を開いた足利尊氏も、源氏の棟梁であり武士を束ねることで、朝廷を超える力を持ち幕府を開くことができた。戦国乱世は、足利から落ちてきた実を拾うことができるか?それを競っているようでもあった。

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