第24話 堅城・高松城
宗忠は、負け惜しみなのか清正を認めながらも、何か考えがあるようだ。武術も最初は、力任せになってしまう。あらゆる体の部分が疲労で痛み、次の修練では、動かせる部分で対処することになる。それから、少しずつ力が抜けていくようになり、本当に必要な瞬間に力を出すことを体で覚えてくる。そうなると、力が抜け柔軟な動きになり早くなる。宗忠は、腕の力だけではなく体重を使い清正の攻撃を耐えていた。
受けていた槍に力を込めて宗忠は、少し押し返す。清正は、反応して更に強く押し返してきた。その刹那、宗忠が馬を操り回転させる。清正は、押したタイミングで、前のめりになってしまった。宗忠は、その機会を逃さない。鎧で、清正の馬の横腹を蹴り上げる。馬の回転を利用しながら、回転力も加わる。清正の馬は、堪らず走り出してしまう。
「勝負はお預けだ。若武者よ」
宗忠は、清正の背中に発した後に、踵を返して城の方角に馬を駆ける。奇襲作戦は、奇襲が肝だ。相手が備えていたからには、奇襲ではなくなる。奇襲作戦は、その段階で失敗だ。敵本体への攻撃は、成功している。ここで、無理攻めをして損害を出す必要もなかった。
暴れる馬をなんとか落ち着かせて清正は、戻ってきた。しかし、その場に既に敵の姿はなかった。敵の奇襲作戦は、防ぐことができたが、清正にとっては、苦い経験となった。宗忠は、力だけでなく馬まで自在に操り、その動きですら利用した。力だけで勝とうとした自分を反省した。
槍を地面に勢いよく突き立て、城の方向をじっと睨む。
秀吉の第一次攻撃は、失敗した。被害も、大きかった。夜襲を受けてからの城攻めで、どちらも被害を出した。作戦の大幅な変更を検討せざる得ない状況だった。
その頃、土佐の長宗我部家では、元親が谷忠澄が大きな部屋の中で、二人だけで何やら会話をしていた。
「毛利殿から返事は、来たか?」
元親が、忠澄に問う。毛利との接触を図っているようだ。
「やっと、返事が届きました。秀吉と戦の最中で、手間取りました」
「おお!して、どうであった?」
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