第20話 軍師の采配

 秀吉は、納得はしていなかった。しかし、弟の秀長と小六に言われれば、これ以上責める事もできなかった。そう言うと、秀吉は席を立ち、その場を後にした。


 総攻撃前だというのに、寝る総大将がいるだろうか。これも、秀吉流のパフォーマンスだろうか。弟の秀長が、後を追いかける。重臣達は、その場で座ったままだった。これも、いつもやりとりなのだろう。秀吉が怒り、それを秀長がなだめる。秀長がいて、なだめに来ることがわかっているからこそ、秀吉も、あのような振る舞いが出来る。


 しばらくすると、秀長と共に秀吉も戻ってきた。最初から戻ってくるのがわかっていての行動だからなのか、妙に難しい顔をしている。秀長が言うので仕方なく戻ったという程を装っているのだろう。しかし、その場にいる者達は、わかっていた。

「あとは、官兵衛に任せる。官兵衛の指図に従うように」

 秀吉は、城攻めの配置などは、黒田官兵衛に任せた。三万もの大軍で包囲しての城攻めは誰にでも出来るわけではない。中国攻めから家臣となった黒田官兵衛とは、中国の地において多くの戦場を共にした。当初から戦においては、その知恵を発揮していたが、経験を積み更に知恵に磨きがかかっていた。官兵衛は、城の地形が描かれた図を前にして指図を行う。

「城の北からと南から同時に攻撃。本丸に近い南からの攻撃を主力とする。沼に挟まれて通れる道は狭い。一気に押し寄せて身動きが取れないように注意して欲しい」

 官兵衛は、大筋の方針を伝えた後に、配置を指図していった。最初の攻撃は、小手調べと言ったところだろう。敵の動きや、反応をこの攻撃で見定めて、次の攻撃に繋げる。城に篭り、守りを固めた相手は、そう簡単に攻略できるものではない。

 兵糧攻めで降伏を促したり、地下道を掘って中に侵入するなど、城攻めも様々な方法があるが時間がかかる。孫子の兵法でも、城攻めは下策とも言われていて、損害も大きく時間もかかってしまう。戦国時代は、至る所の山には、砦であったり城が築かれていた。大規模の野戦というよりも、小規模な砦などを攻め落とし、城を包囲していく方法しかなかった。

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