第11話 毛利との戦い

「元親殿には、三好から攻撃を受けても防御に徹するように」

 光秀は、利三に指示した。この状況で、攻撃を受けた側とは言えども、今や信長の部下とも言える三好康長に攻撃をする事は、許されなかった。防御に徹していれば、後日光秀が仲介する事は可能だ。中国、四国が片付けば、次は九州征伐だ。その際に、四国からも九州へ向かうのは明らかであり、四国勢として活躍すれば九州の領地を得る事も可能だ。


 今は、目先の領地や利益に目を向けず、その先に目を向けて行動するべきだろう。光秀が日向守の叙任と惟任の賜性を信長から受けたのは、九州征伐を考えているのは明らかだった。日向守を名乗るという事は、日向の守護を意味していた。応仁の乱以降の混乱した状況では、格付けの意味合いが強くなってしまったが、それでも日向守を名乗る事で、将来的に日向の国を治める場合には、それなりの意味つけと効果があると考えられる。日向守を叙任した時に、光秀の九州への転戦も決まったようなものだった。ただ、気まぐれな信長の気が変わらないという保証もなかった。


 同じ頃、中国にいた羽柴秀吉は、毛利勢との戦いの最中だった。備中攻略に向け姫路城で軍勢を整えていた。備中の攻略が成功すれば、次は毛利本体との衝突は避けられなかった。その時は、信長に援軍を要請して毛利との最後の決戦を行うつもりだ。

「それそれ、急げ急げ!毛利が来る前に備中を手に入れるぞ」

 秀吉が陽気に笑い、踊りながら家臣を急かしていた。今や、織田家中でも一目置かれる存在でもあっても、秀吉らしい動きで皆のやる気を引き出していた。そこに大量の握り飯が運ばれてきた。

「おお、ご苦労、ご苦労。握り飯じゃ、みなも食べろ、食べろ」

 そう言いながら秀吉は、真っ先に握り飯を二つ三つ掴み、口に運んでいた。

「今日の飯も、うまいのう。さあ、みなも食べろ、食べろ。次は、いつ食べれるか分からんぞ」

 秀吉がうまそうに食べるのを見て、周りにいた家臣も同じように、握り飯を掴むと同じくらいに口に運んでいた。一瞬で、家臣と家臣の陽気な笑顔を秀吉を包んでいた。これから、過酷な戦に出かける人達には見えなかった。いや、むしろ過酷な戦だと分かっていただけに陽気に振る舞おうとしていたのかもしれない。

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