第6話 信長の思惑
重々しい雰囲気の中で、秀満が問いかけた。
「殿、このままでは明智は、厳しい状況に追い込まれるのではないですか?」
長宗我部との交渉を行い、はじめは上手く行っただけに、今の状況の変化で明智家が長宗我部の行動について責任を問われかねない。秀満は、その部分を恐れ、光秀に問いかけたのだった。
「元親殿が、我らの要請に従ってくれればいいのだが、万が一の場合は、我々が四国攻めの先陣をすることになるだろう」
交渉役を行い、長宗我部家と親密になっただけに、戦となれば真っ先に攻撃を担う必要があった。このような時代では、相手勢力から寝返った武将などを先陣に使い、双方で消耗させるように仕向けられる。簡単に人を信用できない時代であり、生き残るためには何でもする時代でもあった。
「四国攻めと中国の毛利攻めは、お館様の考えでは規定路線なのかもしれないな」
光秀は、信長の性格を推理し、他人事のように話した。その場合、中国の毛利は、秀吉が既に交戦中であり、四国は遊軍として残っている光秀に声がかかるのは、必然だろう。
「お館様は、既に先を見ておられる。次は、九州攻めをお考えだ」
全国統一という、これまでに誰もやったことがないことに信長は、あと一歩というところま来ていた。関東の北条、越後の上杉は、既に交戦中であり、中国、四国も情勢としては、織田勢に有利になっている。東北は、伊達家が既に織田家と交流をしており、伊達家に東北は任せれば治められる道筋も見えてきた。残るは、九州だけだ。
九州は、足利幕府を開府した足利尊氏が、京での戦で負けた後に、九州で再起をしたように、中央から遠く政権からの力が届きにくい場所でもあった。海外との交易も盛んで、九州の諸勢力の攻略こそが、全国統一の総仕上げになると考えられる。
「まだまだ、戦働きが続きそうだ」
光秀の口から、つい愚痴がこぼれる。光秀も、最近は、長年の戦での疲労により、昔のようには体が動かなくなってきている。激戦であった丹波攻略おいての陣屋での長期滞在が影響した。丹波攻略で、織田家の中でも随一の功績として認められたが、度重なる戦で荒廃した丹波の復興も半ばであり、中国、四国での情勢を考えても、光秀が出陣する可能性は高かった。
信長の要求も、手柄を立てれば立てるほどに高くなっていく。行き着く先は、どこなのか?信長だけが知ることだった。
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