第2話 屋敷の主

 安土の町を歩く一行が、町外れの一軒の家に近づいていく。少し外れただけだが、周辺は田畑が広がっていた。この辺りは、観音寺城の城下町でもあり、すでに町として一定の整備はされていたが、地方の城としての規模と今や近畿周辺を手中にしつつある信長の居城としての規模では差があり、町から少し外れてしまうと、昔ながらの景色を見る事ができた。


 こっちの道で間違い無いのだろうか?半信半疑ながら細い道を進んでいく。先に見える一軒家は、背後には、安土城があり前面には琵琶湖が見えていた。家の場所も少し高台になっていて周囲を見渡せる場所に建てられていた。このような町外れの場所に来るのは、地元の人間かその家に滞在している人物くらいだろう。

 それ以外の目的で来るのは、そこに滞在する人物に取っては、好ましくない人物だろう。家と言うよりも屋敷に近く、周りは塀で囲まれ堀とは言えないが、簡単な溝が掘ってあった。あまり仰々しい構えにすると返って重要人物が滞在していることを露呈しているようなものだ。


 屋敷に通じる道を歩いていくと、入り口と思われる門には、警護の物らしき人物が立っていた。着るものは、現地に合わせているが身に帯びている刀からは、異様な圧迫感を感じる。警護と思われる人物は、あからさまに目線を向けることはないが、こちらの接近を肌で感じている。

 いよいよ屋敷に近くなると、こちらに向かって向き直してからお辞儀をする。

「お待ちしておりました。主人は、先に到着してお待ちしております。どうぞ、お入りください」

 一行の姿を確認してから、門を開けるように仕草で指示をしている。一行は、軽く会釈をしながら、門をくぐり屋敷の中へ入っていく。屋敷の中に入り、驚く。外から見ると、ごく普通の家なのだが、内部は全然違っていた。日本庭園のような、大きな回廊型の庭園があるのだが、建物は洋風。いや、洋風にしようとしているが出来ていないというか、純和風でありながら洋風テイストと言ったところか。これまでみた事がない様式なので、皆驚く。

「お待ちですので、どうぞ中にお入りください。」

 いつの間にか、先程の警護の物が背後から話しかけてきた。

「そうでした。まずは、先にご挨拶申し上げましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る