第12話 「学校祭」 その21


「くっそぉ……何で僕が……」


 僕は学校近くのコンビニから先輩の分の弁当を四つ買い、帰路に着いていた。なかなかどうして、何で僕がこんなことをしているのかについては理解が苦しむが意外にも先輩は優しく、弁当の分のお金は預けてくれていた。


「……まあそれは良いんだが、最近四葉も僕の扱い方が雑だし……僕ってそんなに悪いことしてるのかな?」


 独り言ではあるが、誰かに答えてほしい。まあ、あの前沢やら部長やらに聞いたところで言い返答が帰ってくるとは思えない。椎奈に聞いたらいい答えが返ってくるかもしれないが……あいつにこれを聞くのはさすがに酷だろう。


『私なら、そんな扱いはしないよ!』


 なんて感じで嬉しそうに言ってくるだろうし、僕なんかがそれにこたえる資格はないし。まあ、また何かしちゃっているのは確実なんだから、もっと周りに気を配るべきなのだろう。


 校門まであと少しと言うところで僕の目の前をある一つの乗用車が横切った。


「……うぉ、びっくりした」


 何かおぼつかない危ない運転で、危うくひかれかけたがしかし同時に。


「……あっぶ…………っえ!?」


 僕は驚いた。


 いや、驚いたというよりは突然の出来事に頭が追い付かなくて声が出てしまったというのがあっているだろう。なぜなら、その車にあいつ……元母親が乗っていたからだった。


 あの日見た顔を覚えていないわけがない。

 あの日見た意味の分からない行動もそうだったが、僕たちの高校の目の前をあんなにも軽々しく通るなんて思ってもみなかった。よくもまあのうのうと通れる。


 幸いこちらには気付いていなかったが、あいつの隣に男が見えたような気がする。でも、あの日に見たチャラい男ではない。だが、どこかで見たような顔……それに覚えはあったが、一体誰なのかは思い出せなかった。



 

 何とか先輩たちの責任追及を逃れ、まるでブラック企業の様な部活を定時退社出来た僕はいつも通り四葉と帰路に着いていた。


「ゆずと……大丈夫ですか?」


「えっ? いや、まあ……」


「そうですか……最近、顔色が悪いですしなんか色々としているようですけど……何があったか話してくれないんですか?」


「すまない……」


「四葉は別に謝ってほしいわけじゃないんですけど」


「え、でも最近機嫌悪いしてっきり僕が何かしたんじゃないかと」


「でもそれは合ってます。ゆずとが何かしていますねっ」


「ほらやっぱり……」


「でも別に、それはそれ、これはこれです」


「僕としてはさいきんそっけない理由がが知りたいんだけどなぁ」


「自分で考えてみてはどうですか……?」


 だから自分で考えているんだけどな……最近尖りだした意味が分からないというかなんというか、それにあのことだってあるし今更僕の昔の家族に会った、なんて話されても聞きたくないって言われそうだし全く分からないぞ。


「……だめだ、わからん」


「ほんとに考えてるんですか?」


「もっちろん、完璧に考えて完璧に配慮してるし!」


「配慮?」


「あ、いやなんでも……」


「……そう言うところなんですけどね?」


「え、どこがだよ?」


「そういうところです。ゆずとは最近、四葉のことを考えすぎです……四葉って高校生ですよ、自分のことは自分で出来ますっ」


「自分のことはって……あのな、そのくらいは分かっているぞぉ」


「分かってません」


「えぇ?」


「まあいいです、そのくらいのことが分からないなら別にいいですっ」


 そう言って、彼女はそそくさと歩いて行ってしまった。そして、その場に取り残された僕、全くと言っていいほど意味が分かっていなかった。

 

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