第12話 「学校祭」 その20
ここは一つだけ感想を述べて今日の午後の出来事を締めくくるとしようか。
僕の
「ゆずと……何考えてるんですか?」
「えっ! いや、何も?」
「なら、ちゃんと前向いて歩いてください」
「そ、それはそうだな、すまない」
しかし、可愛いのは置いておいて。
僕が大通公園で居眠りしていたあの事件から彼女は僕へのあたりが少しきつくなった。心配からきているかもしれないというのは分かるのだが、最近顔が引きつっていてかなり怖い。
いつもなら子犬が吠えてるくらいにしか思えなかったのが最近は急に刃物でも持っているように見えてきた。これが女子の怖さか、さすがだな……所詮は四葉も女子だったってことか。
「ゆずと」
「え?」
「壁」
「えっ————!?」
その忠告も束の間。
途端に、脳天から稲妻の如き激痛を感じる。どうやら、僕の額は目の前に壁にぶち当たっていたようだった。
「だから、前向いて歩いてくださいって言ったんですよ……」
やや呆れている四葉の声がしたが、そんなことなんてどうでもいいくらいに脳天が痛い。膝に手をついて何とか立ち上がったがまだ周りがぐるぐる回っていてフラフラする。
「いてぇ……」
「自業自得です」
「うう……」
「はぁ……ほら、こっち」
すると、四葉が手を差し出してきた。その対応に少し驚いたが僕も順じて手を握る。小さくて柔らかい綺麗な手だった。その感触はフラフラしている僕の脳でも分かるくらいに優しく、何か見てはいけないものを見ているような感覚を感じさせる。
「あ、ありがと」
「じゃあ、部室行きますよ」
というわけで。
今日も今日とて前の活動を早退した僕であったがその結果は無論、言わずもがな……。
「洞野兄、ちょっとこっち来い」
部室に着いた瞬間に部長に外に呼び出され、
「なあ、クソ新人?」
まともな表情をしていない狂人の様なドSな木村先輩に胸元をくっきりと掴まれ、
「お前……この前の久々の部活休んだだろ?」
その隣に立っているこっちもこっちでかなり怖い顔をした枢木先輩に問いただされる。
「いや、そのぉ……なんと言いますか、ね」
僕の声など彼女たちには一切聞こえてないらしく。部長が溜息を溢してこちらを見つめた瞬間。
「言い訳無用!」
「笑止千万っ!」
急に叫び出すこのドS先輩コンビ。
「バツですっ‼‼‼‼」
そして最後、漫勉の笑みで崎島花梨先輩が言い放ったこの台詞。その後に僕がされたことは「コンビニで夕食買ってこい!!」という優しき恐喝だった。
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