第12話 「学校祭」 その22
————☆
今朝はなぜだか分かりませんが目がすぐに覚めました。隣の部屋にいるゆずとは今頃寝息をあげて寝ていると思いますが、なんとなく起きてみることにしました。
「……あぁわ~~」
大きな欠伸が口から逃げていきます。
そんな見っともない四葉を見つめるのは窓の外側の淵に座っている猫ちゃんです。名前はまだありません——というか、この辺に住み着いているノラ猫なので正直、四葉が決めていいのかと秘かに悩んでもいます。
「にゃぁ……?」
『みゃぁ……っ……』
四葉が猫の鳴きまねをすると猫ちゃんはそっぽを向いて去っていきました。ちょっと嫌われた感じがしてなんか悲しい……それにというか、だって、猫語なんてわかりませんしっ!
「ふぅ……」
朝から若干の不幸を浴びて、四葉はしっかりと目を覚ましました。まあ、なんだかんだ言って猫ちゃんは可愛いの癒されますし、そんなかわいさ溢れる猫ちゃんの、さらに可愛いつぶらな瞳で見られてしまってはたまったものではありません。
重い身体をなんとかベットから出して、パジャマのままリビングへ向かいます。
「あら、もう起きたの?」
「あ、うん……お母さん」
リビングの扉を開けるとお母さんが朝ご飯を作っていました。いつも朝五時に起きてみんなの弁当や朝食を作っていて、本当に体を壊さないか心配になるけど。四葉が小さい頃も毎日こうやっていた……まあ、昔の思い出は色々複雑だけどそれでもお母さんには感謝しています。
そんなこんなで数分、お母さんは四葉の方に振り向いて。
「ねえ四葉」
「ん?」
「柚人くん、起こしにいってくれない?」
「……っえ?」
「いいから、いってきてぇ~~」
「ぅ……」
「あらら、こっち来てから最初の週はよく起こしにいっていたじゃないのよ。なにかあったの?」
「っぐ……い、行ってきます」
「はぁ~~い、よろしくねぇ~~」
まったく、母親って言う生き物は何でもお見通しなのですか。確かに最初は良く起こしにいっていましたけれど、ちょっとあれなことがありましてゆずとに怒られたので正直行きたくないです。
扉を開け廊下に出て、どうしようと困っていたその時、玄関の方で物音がしました。
「っ!」
すこしビビッちゃいましたがどうやら郵便の様で、別に危ない人ではありませんでした。
「お母さんもご飯の準備だし、せっかくなら取ってあげましょうか……」
そう思い立って四葉は玄関隣の郵便ポストを開けました。
「新聞と……チラシと……ん、なんだこれ?」
すると、新聞とチラシの隙間にハガキほどのサイズの封筒がポツリと挟まっていました。恐る恐る背面を見るとそこには『井上四葉様』と、どこか懐かしい字体で書かれてありました。
「なんで……旧姓……?」
——しかし、その時の四葉にはこの手紙が織りなす災難がどんなものなのかは全く分かりませんでした。
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